2014 Fiscal Year Research-status Report
梵語および梵語・ネワール語混成の写本から見るネパール仏教の特徴について
Project/Area Number |
24520056
|
Research Institution | Shuchiin University |
Principal Investigator |
SHAKYA Sudan 種智院大学, 人文学部, 准教授 (60447117)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | ネパール仏教 / 梵語・ネワール語混成写本 / 仏教写本 / スヴァヤンブー・プラーナ / ネワール語 / ヴラタ / ウシュニーシャヴィジャヤー / ジャンク長寿祝賀儀礼 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は「梵語および梵語・ネワール語混成の写本から見るネパール仏教の特徴について」をテーマとし、ネパールにおける現地調査と梵語および梵語・ネワール語混成の写本の解読を通して、インドから直接伝播してきた「ネパール仏教」の特徴を明らかにすることを目的としている。 平成26年度では、引き続き、ネパール仏教の特徴を知る上で最も重要な文献と見なされている『スヴァヤンブー・プラーナ』を中心に文献研究を進めている。また、昨年度の調査により確認したネパールの寺院及び個人所蔵の写本を調査した梵語および梵語・ネワール語混成の資料を整理、精読した。その中に、「ジャンク(jamku)」と呼ばれる長寿(77歳、88歳、99歳)を祝賀する儀礼に関する資料が含まれており、この儀礼の典拠はジャガッドダルパナ(12-13C)の著作『阿闍梨作法集』に求められるが、ネパールにおいて独自の発展を遂げている事が明らかになった。この成果の一部を、2014年6月にヘブライ大学にて行われたシンポジウム「中国・チベット密教学会」において発表をした。同様に、2014年8月にはウィーン大学主催の国際仏教学会(IABS)の部会“Recent Research in Newar Buddhist Studies”にて 発表した。さらに、調査で得られた写本や碑文を含む文献及び図像資料に基づいて「ネパール仏教における三宝帰依と三宝マンダラ―梵語及び梵語・ネワール語混成資料を中心に―」という論文を『密教学』第51号に掲載するために提出した。 なお、昨年に引き続きネパール現存の仏教写本で、個人所蔵のものお現状調査も進めている。また、所有者の許可を得て、それらを撮影し記録する作業を始めた。今回は僧侶と在家の個人所蔵写本を調査ができ、所蔵される写本の傾向も明らかになってきた。それらを研究資料として扱えるようにする予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
文献研究において、『スヴァヤンブー・プラーナ』の内容の考察と共に文献のテキスト化を順調に進めている。これまで『スヴァヤンブー・プラーナ』にも言及され尚かつ、「サプタヴァーラダーラニー」(七種の陀羅尼集)に含まれている持世(ヴァスダーラー,vasudhara)菩薩及び仏頂尊勝母(ウシュニーシャヴィジャヤー, usnisavijaya)の関連文献の研究を進めてきた。いずれもジャンク儀礼関連の資料である。また、ネパール仏教の特徴を示す「三宝マンダラ」(triratnamandala)を明らかにするため、ターラー、観音、ヴァスダーラーなどのヴラタ(vrata)祭の供養次第の解読を進めた。 個人所蔵の写本の現地調査は順調である。僧侶と在家が所蔵している写本の種類には大きな隔たりがある事が明らかになった。前者の所蔵資料には経典、陀羅尼類に関する写本と共に日常の儀礼に用いる儀礼次第から、伝授、ヴラタなど様々な儀礼に関する写本が多い。後者は儀礼を執り行う事は認められないため、所蔵写本の多くは経典や陀羅尼類と共に物語アヴァダーナに関するものが大半である。
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続き、文献解読と現地調査を実行していく。文献調査として、『スヴァヤンブー・プラーナ』の文献研究とともに現地調査で収集した資料の整理と解読をし、梵文・ネワール語混在写本を解読するための覚え書きやマニュアル作成を進めていく。さらに、今年度も引き続き寺院及び個人が所有する仏教写本の調査を進め、それらの目録を作成する。そこで用いられる写本類、法具、図像などを記録し、それらを研究資料として活用できるように電子化を進める。また地元の僧侶や有識者よりそれらの意義について聞き取り調査をする。これらは調査で得られた資料の整理と分析を行い、ネパール仏教の特徴を検証する。 27年度は研究計画の最後の年度となるので、これまでの研究成果を分析・整理して、学会等で報告、研究雑誌等で研究成果を掲載する。27年度は5月に東北大学(宮城)主催の印度学宗教学会、7月に龍谷大学(京都)主催のシンポジウム(「世界の仏教研究と仏教写本」)、9月に高野山大学(和歌山)主催の印度学仏教学会、10月には智山伝法院(東京)主催の日本密教学会において研究発表をすることを予定している。 なお、本報告書を作成している最中にネパールは大震災に遭ってしまい、人命と共に多くの自然・文化遺産が被害を受けた。これまで、調査に協力していただいた方々の中にも家屋と家財に被害があるとようである。ネパールにおけるこれまでの三年間で撮影・記録した資料はなお貴重となり、返ってネパール復興にも活かせるのではないかと考える。
|
Research Products
(6 results)