2012 Fiscal Year Research-status Report
ジネーンドラブッディ『集量論複注』第4章・第6章梵語写本の批判的校訂
Project/Area Number |
24520058
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
桂 紹隆 龍谷大学, 文学部, 教授 (50097903)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ディグナーガ / ジネーンドラブッディ / 集量論 / 集量論複注 / 仏教論理学 / 仏教梵語写本研究 |
Research Abstract |
本研究の目的は、5~6世紀の仏教論理学者、ディグナーガの主著『集量論』に関して唯一残存する注釈、ジネーンドラブッディの『集量論複注』の第4章・第6章梵語写本の批判的校訂本を作成することにより、ディグナーガの論理体系の理解を深め、それを再構築することにある。第4章に関しては、既に研究協力者の岡崎康浩博士が全体の批判的校訂の最初の試みを作成し、同渡辺俊和博士がそのうち写本フォリオ169b4~178a3までを吟味検討した結果を、龍谷大学で隔週に開催する研究会で再検討し、当該個所の『集量論』梵文テキストの再構成と英訳・和訳、『同複注』の批判的校訂と英訳・和訳を完成している。また第6章に関しては、研究協力者の小野基筑波大学教授が写本フォリオ243a1~250b4の批判的校訂の最初の試みを作成し、渡辺博士・ライプチッヒ大の室屋博士と検討した結果を、龍谷大学の研究会で再検討し、244a2まで第4章と同様の処理をおこなった。 北京の蔵学研究中心で開催された「国際チベット学会」、台北の国立政治大学で開催されたワークショップなどで研究成果の一部を発表した。また、ウィーンのオーストリア科学アカデミーのHorst Lasic博士、渡辺俊和博士、ライプチッヒ大学のEli Franco博士が来日した機会に研究会を開催し、研究のレビューを受けると同時に、互いの研究成果を交換した。Lasic博士は、ウィーンで『集量論複注』第1~2章の批判的校訂本作成に主体的に参加し、現在第5章の校訂作業に従事中である。 『集量論』第4章の梵文テキスト再構築により、従来のディグナーガ論理学の理解に修正を加える必要が生じたことは本年度の最大の研究成果であると言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初は、『集量論複注』第4章の批判的校訂に集中する予定であったが、筑波大学の小野教授の第6章の批判的校訂も並行して遂行することができたからである。
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Strategy for Future Research Activity |
すでに、システムが出来上がっているので、計画通りの研究が遂行できると考えている。 今後2年間で『集量論』第4章・第6章の梵文テキストの再構築と英訳・和訳の作成、『集量論複注』第4章・第6章の批判的校訂と英訳・和訳を完成する。『集量論』の構築された梵文テキストは、インターネット上に公開し、英訳と和訳は学術雑誌に公表する。『複注』の批判的校訂本は北京の蔵学研究中心のシリーズにおいて公刊する。英訳と和訳は学術雑誌に公表する。 同様の研究を遂行している、オーストリア科学アカデミーと蔵学研究中心とは従来とおり、研究者および研究情報の交換を続けて行く。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
予定していたノートパソコンの購入を次年度に先送りするなどしたため。 4月に京都大学の出口康夫准教授と共催するワークショップ「アジア哲学の存在論ー仏教学と分析哲学の視点から」に参加するローザンヌ大学名誉教授Tom Tillemnas博士と広島大学小川英世教授の招聘費用に使用。9月初めにオーストリア科学アカデミーの渡辺博士、ライプチッヒ大学の室屋安考博士を招聘して『集量論複注』第6章の集中的な研究会を開催するために使用。 7月にブリュッセルで開催される L. V. Poussin記念「アビダルマ学会」に参加し、9月にマギル大学のBrendan Gillon教授と初期仏教論理学書である『方便心論』を検討するためにモントリオールへ出張するために使用。 その他、最新の研究成果の購入などのために使用。
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