2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24520064
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
森本 一夫 東京大学, 東洋文化研究所, 准教授 (00282707)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | イスラーム教 / シーア派 / ムハンマド一族 / サイイド / シャリーフ / 系譜学 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度の当初計画は,平成25年度末のプリンストン出張中のできごとによって大きな変更を余儀なくされることとなった。同出張においては,英語著書の出版計画に関し,出版社の選定や出版社との交渉といった方面では大きな進展があったが,同時に,研究内容のかなり根本的な部分について大規模な見直しを必要とするような指摘をうけたのである。指摘されたのは,作成中の著書のなかでかなり重要な位置づけを与えられている人物が,シーア派のうちの十二イマーム派に属していたのではなく,ザイド派に属していたのではないかという点であった。これは,細かいと言えば細かい指摘であるものの,私の著書における議論の当否という観点からは大変重い指摘であった。この指摘が,シーア派研究の世界的な権威とされる二人の別個の研究者から別個になされたこともあり,問題の人物の宗派的帰属を問い直すことが必要となった。そのため,年度前半は,一次史料をかなり広範に読み返し,この問題を洗い直すことにあてざるをえなくなった。 約半年の検討の結果,プリンストンでの指摘は,幸いにして指摘の方こそが誤りであるという確信を得ることができた。また,この間の見直し作業によって,問題の人物が属していた宗派ネットワークなどについて,これまでまったく認識できていなかった事実を発見することができ,それらを踏まえて問題の人物の宗派帰属だけでなく,そのことの持つ意味についてもより深い議論を呈示することができるようになった。9月にオックスフォード大学で開催された国際学会においては,以上の内容を踏まえた研究報告を行った。 年度後半は,前半の見直し作業で得た知見にもとづく著書原稿の増補・改訂作業を中心的に行った。それと平行して,ティムール家によるムハンマドにつらなる血統の主張に関係すると思われる一史料に関する研究ノートの作成も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「研究実績の概要」欄に記した,結果として誤りであった指摘を受けたことにより,著書作成の作業を一旦中止し,一次史料に戻った研究の見直しを行うことを余儀なくされたことが理由である。この間の見直し作業は,中長期的に見れば研究の質を高めることに繋がったが,研究の進捗は遅れることを余儀なくされた。
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Strategy for Future Research Activity |
幸いにして「研究実績の概要」欄に記した指摘が誤りであることは昨年度明確にすることができ,また研究期間の1年間の延長も承認されたので,英文著書作成に改めて注力し,作業を加速させる。また,昨年度の一次史料の見直しの過程で得たいくつかの知見については,著書に反映させるだけでなく,2本の英語論文の形でも発表する予定である。
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Causes of Carryover |
平成26年度前半に英文著書作成作業の一時中止と見直し作業を半年にわたって行った結果,原稿の英文校閲謝金を中心に行う予定であった助成金の執行が計画通りにできなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
英文著書原稿の英文校閲謝金を中心に執行を行う。
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