2013 Fiscal Year Research-status Report
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24520066
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
青柳 かおる 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (20422496)
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Keywords | 生命倫理 / イスラーム / 安楽死 / 尊厳死 / ガザーリー / スンナ派 |
Research Abstract |
生命をどこまで人為的に操作してよいかという生命倫理の問題は、社会的に大きな要請のある極めて重要な分野であるとともに、イスラーム思想史研究において未開拓の分野でもある。現代のイスラーム世界では、西洋医学の枠組みの中にイスラーム思想を反映した生命倫理を構築し、生命倫理に関して活発な議論が行われている。しかしイスラームの生命倫理は、宗教と生命倫理の関係を考えるときに欠かせない重要なものでありながら、キリスト教などの生命倫理に比べて、あまり研究が進んでいない分野である。 そこで私は、避妊や中絶といった女性に関する領域について、二大聖典コーランとハディースおよび神学書、医学書などの古典文献の死生観との比較・検討を行ってきた。その成果を踏まえ、初期胚から作られるES細胞(胚性幹細胞)を利用する再生医療に取り組み、さらに成人の細胞から得られるiPS細胞(人工多能性幹細胞)、臓器移植、クローン、遺伝子治療などの先端医療、さらに安楽死、尊厳死、ターミナルケアといった終末期医療の問題を分析することにした。2013年度はとくに、安楽死と尊厳死の問題を中心に検討した。命の始まりのみならず終わりをも念頭に置くことによって、生命観を総合的に理解できるはずだからである。イスラームにおける安楽死と尊厳死の議論について、古典時代から現代までのテキストおよびファトワーを参照した。また日本やアメリカの裁判などの事例、キリスト教との比較を行った。 研究成果については、一般の方々にも開かれた研究会で発表するとともに、論文を執筆した。また英語論文も執筆中であり、これについては2014年に刊行予定である。さらに、生命倫理の研究を取り入れたガザーリーに関する学術的な一般書をほぼ完成させており、これも2014年に出版予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
イスラームにおける安楽死と尊厳死の議論について、古典のテキストから現代のファトワーまで、網羅的に収集分析することができた。さらに日本、アメリカの事例や、キリスト教との比較も行うことができた。また私の大きな研究テーマである、古典時代のイスラーム思想家、ガザーリーに関する著書を執筆し、とくに第4章に現代と結びつく問題として、女性問題や生命倫理の研究成果を盛り込むことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、さらに取り上げるべき生命倫理の問題が残されているので、継続していく。たとえば、再生医療、生殖医療、代理母といった問題について、私は大きな関心を持っているので、イスラームやそのほかの宗教、イスラーム圏やそのほかの地域と比較したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度は、本研究と関連するイスラームの生命倫理について、民間助成金や学内助成金をいただくことができた。そのため、本科研費からの支出が予定よりも少なくなった。 今年度は、民間助成金などには申請していないため、計画通りに使用したい。アメリカなどへの出張、国内出張、また文献購入費に当てる予定である。
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