2013 Fiscal Year Research-status Report
メキシコ低地マヤ地域におけるマヤ・カトリック的宗教文化統合の実証的研究
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24520068
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Research Institution | Miyazaki Municipal University |
Principal Investigator |
中別府 温和 宮崎公立大学, 人文学部, 教授 (00155805)
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Keywords | マヤ / カトリック / 時間感覚 / 空間感覚 / 太古性 / 世界性 / 理念性 / 内調整 |
Research Abstract |
平成25年度は、8月22日(木)~9月12日(木)の期間、宗教的文化統合という仮説的操作概念を使用して、マヤ・ユカテカの一カトリック村落マニの時間および空間感覚を宗教事象の太古性、世界性、理念性、内調整(adjustment)という視点から個の断面で調査分析した。 具体的調査方法は時間感覚については質問紙と有意味図版(2枚)を使用した聴取調査であり、空間感覚については写真(6枚)を使用した聴取調査である。時間感覚については19事例、空間感覚については20事例を収集した。その結果、時間感覚および空間感覚に関する個の断面における具体的内容をさらに厳密にすることができた。 研究実績の概要は次のとおりである。 時間感覚に関しては、日、週、月などの時間が神や聖母・聖人と関連づけて意味づけられていること、神話的時間(イエスの誕生と死、イエスのことの再現としてのミサなど)が創造、罪の贖い、復活、救いなどによって意味づけられ、日常の時間へのそれと比較して複雑で持続的であること、時間と自己把握については過去と未来に対して時間幅が広いものの過去の方がより時間幅が広いこと、聖母マリアとキリストの磔刑についての知識が長い時間を経ても現実のこととして認識されていること、時間感覚の共有と分有の実態は同一家族のメンバーによって相当度に異なること、を具体的に解明した。 空間感覚に関しては、教会と祭壇の宗教的役割が明確に意識されていること、学校での学びと教会での学びは区別され教会での学びの姿勢と方法が学校に用いられなければならないと考えられていること、教会に附設する広場が「俗世間」と意味づけられ「精神的な意味で見るべきものは何もない」と語られること、ミルパに対しパルセーラは従属的で補足的な位置を占めていること、中心・四方(五方)の感覚にはマヤとカトリックの考え方が複合していること、などの事実を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は1983年~2012年の期間継続した研究の成果を集大成して、『メキシコ低地マヤ地域における宗教的文化統合の実証的研究』」 A Study of Religio-cultural Integration of Lowland Maya Communities in Mexicoとして刊行物で公表することを課題としている。 刊行物の体裁の概要は次のとおりである。原稿は「宮崎公立大学紀要」等に寄稿しつつ整えてきているので刊行は計画どおり行うことができる。なお、当初は欧文報告書を平成25年度に刊行し、和文報告書を平成26年度に刊行する予定であったが、時間感覚および空間感覚に関するより厳密な調査データが計画を上回って大量に収集できたことから、平成26年度に同時に刊行することとした。 『メキシコ低地マヤ地域における宗教的文化統合の実証的研究』①報告書(モノクロ)②表紙 レザック66 170k③本文 上質紙 35K④16ページ×12版 192ページ モノクロA Study of Religio-cultural Integration of Lowland Maya Communities in Mexico①報告書(カラー+モノクロ)②表紙 レザック66 170k③カラーページ コート 62.5k④本文 上質紙 35K⑤16ページ×12版 192ページ モノクロ 従来、宗教現象を研究するにあたっては、時間・空間感覚が集団レベルで共有されている実態が分析されてきた。この分析視点と方法は重要である。しかし同時に、個人レベルで現実にはどのようにそれらの感覚が分有されているかの実態も厳密に分析することが不可欠である。 平成26年度は以上の視点から一昨年度および昨年度と同じ研究方法で調査を継続し、被験者を同一家族・親族に集中させて、個人レベルでの分有の類似と相違の解明を目指す。
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Strategy for Future Research Activity |
時間感覚と空間感覚に関しては、研究目的に相応した結果が得られていることから、平成26年度も再度調査を継続し、内容をさらに厳密にする。具体的には、時間感覚と空間感覚の様態が個人レベルでどのように異なるかを調べる。 本年度は8月から9月にかけて約一ヶ月の現地調査を実施し、平成24年度および同25年度に実施した調査結果および従来の調査結果を合わせた全体のレヴューを行う。このレヴューに関連する調査に必要な謝金として10万円を計上する。 レヴューの結果を踏まえ、1983年から2012年までの調査成果全体を『メキシコ低地マヤ地域における宗教的文化統合の実証的研究』A Study of Religio-cultural Integration of Lowland Maya Communities in Mexicoとして集約し、刊行物の形で公表するとともに、データ・アーカイブに開示する。データ・アーカイブに関する経費としては、この作業への協力者への謝金を1日8,000円×5日=40,000円として予算化する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初は欧文報告書を平成25年度に刊行し、和文報告書を平成26年度に刊行する予定であったが、時間感覚および空間感覚に関するより厳密な調査データが計画を上回って大量に収集できたことから、平成26年度に同時に刊行することとしたため。 上記の理由から、欧文の報告書について、平成25年度内に発行予定だったものを、平成26年度内に発行予定である。
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Research Products
(3 results)