2012 Fiscal Year Research-status Report
市場経済批判としての「知的障害者との共同生活」運動の思想・実践的可能性の研究
Project/Area Number |
24520070
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
寺戸 淳子 専修大学, 文学部, 兼任講師 (80311249)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 宗教学 / 倫理学 / 共生社会 / 障害者 / ボランティア / 市場経済 / 家族 / カトリック |
Research Abstract |
1.具体的研究内容 ①実地調査:〈ラルシュ〉共同体の調査を行うに当たり、知的障害者とサポーターの共同生活という、特別な注意と配慮が必要な現場であるため、初年度は国内の〈かなの家〉(静岡県葵区)で必要な経験を積むこととし、国外(トロント、パリ)の調査は次年度に見送った。〈かなの家〉ではグループホームに短期滞在して利用者・スタッフと寝食・活動を共にしながら調査を行い、通いの利用者や家族、ホーム創設者などに対してもインタビューを行った。また、〈ラルシュ〉共同体スタッフが主催し、〈信仰と光〉(「平成21-23年度科学研究費助成事業21520069」の主要調査差対象)の関係者も多数参加する「リトリート(黙想会)」にも参加して調査を行った。 ②資料研究:〈ラルシュ〉共同体創設者ジャン・ヴァニエの著作の分析を中心に、計画に従って、〈ラルシュ〉〈信仰と光〉関連の資料の分析を進めた。 2.当該年度の研究の意義と重要性 〈かなの家〉での調査は計画通り実施でき、次年度以降の調査研究の準備も進んだ。同ホームでは現在、スイスの共同体でコミュニティーリーダーを務めていた男性がサポーターとして働いており、彼に2つの共同体での体験について聞けたこと、また、同時期に滞在していた〈ラルシュ〉共同体国際本部アジア地区アドバイザーと知り合い、サポーターに対する支援の必要性、他国の状況、国際組織としての展望など、さまざまな話を聞くことができたことは、大きな収穫であった。さらに上記「リトリート」では、各国に招かれて講演を行っている、かつてアイルランドの共同体でリーダーを務めていた男性とも知り合い、このように各国の立場の異なる関係者とつながりができたことで、国ごとの問題点・比較や国際的な組織としての今後の展開(現在〈ラルシュ〉共同体は、創設以来初めての大がかりな組織改革を行っている)を調査する上で、非常に有意義な調査となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記「研究実績の概要」に記したように、国内での調査は順調に進んでいる。〈ラルシュ〉共同体の国ごとの比較や国際的な組織改革についての調査という点では、人との出会いに恵まれ、予想以上に進展している。反面、平成24年度は資料分析が中心であったため、創設者等が執筆活動を通して述べる観念・思想が「現場」の活動(各サポーターの言動)とどのように結びついているのか、本研究で分析の鍵概念として採用している「市場経済」「家族」「贈与」が「現場」で具体的にどのような形で現れているのか、という点については、未だ調査実績が不足しているため、考察が深まっていないという反省点がある。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度以降、トロントとパリの〈ラルシュ〉共同体で調査を行う。国内の〈かなの家〉での調査も続行する。できれば海外調査の前に、国内でさらに経験を積んでおきたいが、日程の関係で前後する可能性がある。資料研究は、「障害学」・福祉学(「行政サービス」)の分野が未だ十分ではないので、この面を強化する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記調査を実施するために使用する。このため支出の大半は旅費に当てられる予定である。
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