2014 Fiscal Year Annual Research Report
市場経済批判としての「知的障害者との共同生活」運動の思想・実践的可能性の研究
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24520070
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
寺戸 淳子 専修大学, 文学部, その他 (80311249)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 宗教学 / 倫理学 / 共生社会 / 障害者 / 市場経済 / 市民貢献活動 / 国際ネットワーク / 日本・カナダ・フランス |
Outline of Annual Research Achievements |
1.最終年度に実施した研究の成果 2014年8月6日から9月29日までフランスで現地調査を行った。8月7日から9月22日までトローリー・ブルイユの〈ラルシュ〉共同体でフィールド・ワーク(知的障害者と共に暮らすグループ・ホームにアシスタントとして滞在・調査しつつ、創設者ジャン・ヴァニエ、創設当初からのメンバー3名、スタッフ2名、他のホームの責任者1名をはじめ、多くのアシスタントと関係者にインタビューを実施)を行った後パリに移動し、国際〈ラルシュ〉本部でインタビュー調査と資料収集を行い、27日にパリで開催された「〈ラルシュ〉共同体創設50周年記念行事」に、滞在したホームのメンバーと参加して調査を行った。その成果は、①〈ラルシュ〉共同体運動創設時の様子とその後の歴史を生の声で聞くことができた、②EU諸国からのボランティアとの交流により、EU域内での市民貢献・育成活動の実体に触れた、③アジア・アフリカにも広がる(35か国に147か所)共同体間の経済格差や文化的差異にいかに対処し交流を深めるかという課題への取り組みの現状を知った、④創設者へのインタビューや実地調査などを通し、人間の欲望や暴力の問題が共同体で生きる上で重要な課題として認識されていることへの理解が深まった、の4点にまとめられる。 2.研究期間全体を通じて実施した研究の成果 2012年に静岡県の〈かなの家〉、2013年にトロントのデイブレイク共同体で行った調査と合わせ、〈ラルシュ〉共同体運動の歴史と現状について多くの情報・知見を得ると共に、資料分析の土台となる豊かな経験を積むことができた。「市場経済批判」という主題に関しては、それが現場で「格差社会における強者と弱者の接触・和解」の問題として現れ、そこから〈ラルシュ〉が「平和運動」として展開するに至った、という経緯が理解され、その意義の研究という新たな課題を見出すことができた。
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