2014 Fiscal Year Research-status Report
古代キリスト教思想におけるフィランスロピア概念の受容史
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24520072
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
土井 健司 関西学院大学, 神学部, 教授 (70242998)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | フィランスロピア / 古代キリスト教 / キュプリアヌスの疫病 / アレクサンドリアのクレメンス |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、前年度の研究成果をもとにアレクサンドリアのクレメンスのフィランスロピア論をまとめる作業を行いつつ、三世紀のフィランスロピア論をより実質的に研究する方法を模索し、新たな研究を行った。 二世紀とは異なり、アレクサンドリアのクレメンス以降この概念は、概念の用法研究に別の要素を加えて研究する必要がある。すでに公刊した論文において明らかなように、使徒教父、弁証家、聖書外典におけるフィランスロピア論は概念研究のみで明らかにできたが、クレメンス以降三世紀のフィランスロピア論はそれだけでは十分ではない。たとえば神学の中心概念のひとつとして取り上げられ、まとまった思想にまで高められており、またさまざまな出来事との関連でこの概念が用いられているからである。そこで、概念分析という方法論に加えて、思想、実践といった面での考察が必要となった。クレメンスについては論文の執筆をほぼ完成させ、数か月内に投稿予定である。 また三世紀半ばの「キュプリアヌスの疫病」という歴史的事象を研究し、フィランスロピアがどのような歴史的事象との関連で論じられるのかを考察しようとした。そこでまず「キュプリアヌスの疫病」という歴史的事象を残存する史料をもとに考察し、どのような出来事においてキリスト者の愛(フィランスロピア、フィラデルフィア)が発揮されるのかを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
アレクサンドリアのクレメンスにおけるフィランスロピア論を研究した結果、フィランスロピア概念の用法研究に加えて、思想研究の必要性が出てきたこと、さらにどのような出来事においてフィランスロピアが用いられるのか、出来事との関連でフィランスロピアを研究する必要性ができため、新しい種類の研究を追加する必要があったため。
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Strategy for Future Research Activity |
三世紀のフィランスロピア論の研究は完成させるため、(1)クレメンスのフィランスロピア論の研究、(2)疫病とフィランスロピアの関連の研究(キュプリアヌスの疫病に加えて、エウセビオスの記録するパレスティナの疫病の研究の必要があり、これら二つの疫病とフィランスロピアとの関連を研究する)、(3)オリゲネスにおけるフィランスロピア論の研究、(4)その他の三世紀の教父におけるフィランスロピア論の研究(用例研究で十分と考える)、以上四つの研究を実施する。
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Causes of Carryover |
平成26年度はオリゲネスのフィランスロピア論の研究にまで至らなかったため、図書購入、資料調査などを次年度に実施することにしたので未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
図書、資料調査、資料整理の謝金などに使用予定。またパソコンを一台購入予定。
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