2016 Fiscal Year Annual Research Report
History of the receiption of the concept of philanthropy in the ancient Christian thought
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24520072
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
土井 健司 関西学院大学, 神学部, 教授 (70242998)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 儀クレメンス文書 / フィランスロピア / 受肉論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、期間延長をして、積み残していた偽クレメンス文書におけるフィランスロピア論の研究を進めた。偽クレメンス文書は、ローマのクレメンスの名を冠した偽書であり、3世紀はじめのなんらかの原本をもとに4世紀に作成された『講話』(Homilia)ならびに『認知』(Recognitiones)の二書よりなる。 『認知』についてはギリシア語原本が散逸し断片のみ残存するため、フィランスロピアの用例は確認できないが、『講話』においては43用例が認められる。なかでも第十二講話には27用例があり(TLGを用いて両著作についてphilanthrop-で検索)、主題としてフィランスロピアが問題となっている。この問題にすでにファン・コーテン(van Kooten)が論じており、1)非エリート主義、2)反グノーシス的性格、3)反ソフィスト的性格、そして4)不死と神に似ることのための徳としての性格、以上4点を挙げていた(結論として私は1)と4)については賛成、2)と3)については反対)。『講話』におけるフィランスロピアの用例を一つひとつすべて考察をし、とくに第十二講話について第十五講話と合わせて考察することで、いくつかの特徴を浮き彫りにした。偽クレメンス文書のフィランスロピア論は、医療行為をフィランスロピアと捉えるなど一般的な内容をもつが、特徴としてはフィランスロピアを男女両性的とし、「憐れみ」を女性的部分とし隣人愛を男性的部分として分け、さらに男性的部分である隣人愛について、二元論に基づきつつ誰彼を問わず、自然に逆らってもすべての人に善をなすものであるということになる。さらに加えて、このフィランスロピア論が受肉論に基礎付けられていないことは思想史上特異であることも指摘した。またこのフィランスロピア論がユリアヌス帝のフィランスロピア論と何らかの関係があるのではと予測され、今後の課題としたい。
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Research Products
(3 results)