2012 Fiscal Year Research-status Report
南島におけるキリスト教ネットワークの形成とその展開に関する交流史的研究
Project/Area Number |
24520073
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Koshien University |
Principal Investigator |
一色 哲 甲子園大学, 人文学部, 准教授 (70299056)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | キリスト教交流史 / 南島キリスト教史 / 志喜屋孝信 / ホーリネス / 新沖縄建設運動 |
Research Abstract |
はじめに、2012年度初め実施予定の南島地域の全教会へのアンケート調査は中止した。理由は、各教会が所属する教派・教団と充分な意思の疎通を図ってからのほうがより大きな成果を得られると判断したからである。この全教会調査は本研究の中間総括に当たる、2014年度までに行うものとする。 次に、フィールドワークについて、以下に述べる。まず、沖縄島に関するものは以下の通りである。12年11月に横浜市で、當山正堅(民政府文化部長・キリスト聯盟理事長)の関係者から聞き取り調査を行った。また、13年2月に志喜屋孝信(民政府知事)の関係者宅で同氏の手記等を閲覧した。次に、宮古群島に関するもの通りである。12年11月に埼玉県入間市で戦後の教会形成にかかわった人物から聞き取りを行い、東京都杉並区高円寺の馬橋キリスト教会において戦後に宮古島に伝道した牧師と宣教師についての調査を依頼した。最後に、奄美群島に関しては以下の通りである。12年11月と13年2月の沖縄島調査で奄美群島に関する予備調査を行った。また、13年2月には鹿児島市内の公共図書館とザビエル教会で文献調査と聞き取り調査を行った。これをふまえて、13年3月に奄美大島の奄美市名瀬・笠利、瀬戸市町古仁屋のカトリックとプロテスタント教会・関連施設においてフィールドワークを行った。 これらの調査をふまえて、以下の研究発表を行った。まず、「交流史の結節点としての《琉球=沖縄》とキリスト教─日本キリスト教史研究の新たな地平へ─」(恵泉女学園大学シンポジウム「東アジアキリスト教交流の未来への展望」(恵泉女学園大キリスト教文化研究所主催)、12年10月27日、恵泉女学園大学)。次に、「米軍占領下における沖縄人キリスト者の忍従と抵抗」(「関西大学3研究所合同シンポジウム」(東西学術研究所、経済・政治研究所、法学研究所主催)、12年11月17日、於関西大学)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度、最優先の課題は、奄美群島のキリスト教伝道について基礎的な調査を行うことと、今後の調査に必要な人的なつながりをつくることであった。この件については、沖縄島や鹿児島市内で予備調査も順調に実行できた。鹿児島市内での予備調査はほぼ完了した。また、奄美市名瀬におけるフィールドワークでは基礎的な文献史料の収集はほぼ終了した。今後の調査に不可欠な人的なつながりもある程度目途がついた。これら本研究の協力死の助言により、次年度には、喜界島や徳之島、沖永良部島などへの調査の必要性を充分自覚させられ、適切な紹介者を得たことは予想以上の聖下であった。 また、沖縄島での調査で、志喜屋孝信の手記を閲覧できたことは大きな成果であった。これにより、沖縄戦終了後に設立された沖縄諮詢会とそれらが率先して行った新沖縄建設運動にキリスト教思想が反映され、キリスト教徒も積極的に参加していた実態が判明したのも大きかった。 この他、1940年代後半に行政や教会に関わりを持っていた人物とその関係者からの聞き取りも順調に進んでいて、それらを「南島キリスト教交流史」の文脈で体系化する作業に着手できた。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、奄美群島については、13年度の早い段階で喜界島や徳之島、沖永良部島へ第一回のフィールドワークを実施し、可能な限り文献調査と聞き取りを行いたい。 また、これらの地域も含めて南島地域ではでは、戦前、台湾や南洋群島、米国本土・ハワイ、そして、朝鮮半島や旧満州とのキリスト教徒の人的交流が既に確認されている。これらについては、申請者が中心となって2013年に結成した「東アジアキリスト教交流史研究会」とうについてそれぞれの地域を研究のフィールドにしている研究者と充分に意見交換を行って、沖縄、奄美などの南島を中心とする東アジアや環太平洋沿岸のキリスト教交流史の文脈で本研究を結び付けていく努力を行いたい。 最後に、2013年度に戦後の米軍占領下を中心とする沖縄、宮古、八重山群島のキリスト教交流史についての調査区を公刊する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額については、主として南島地域の全教会へのアンケート調査のための経費として計上したものであった。したがって、これらの研究費についてはアンケート調査のための準備に使用する。その上で、余った金額についてはアンケート実施に必要な人脈の形成の必要から現地調査に為の費用の一部として使用する。
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Research Products
(3 results)