2014 Fiscal Year Research-status Report
南島におけるキリスト教ネットワークの形成とその展開に関する交流史的研究
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24520073
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Research Institution | Teikyo University of Science & Technology |
Principal Investigator |
一色 哲 帝京科学大学, 生命環境学部, 准教授 (70299056)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 越境と交流 / 帝国日本の周縁部 / 南島キリスト教交流史 |
Outline of Annual Research Achievements |
2014年度は、本研究のちょうど中間年にあたった。それで、まず、実地調査については、以下の3回行った。2014年7月に福岡市の日本基督教団九州教区事務所内にある奄美群島のプロテスタント教会関係文献(大島、喜界島、徳之島の各個教会史等)を閲覧し、関係者から聞き取り調査を行った。次に、8~9月に沖縄県の公文書館、県立図書館で文献調査を行い、戦前期の教会形成と関係者の人的交流・越境についての成果があった。また、沖縄キリスト教学院では、戦後の占領軍と教会に関係について関係者からの聞き取り調査を行った。最後に、11月には、奄美大島で行われた九州教区の集会に参加し、戦後、奄美地域で教会形成に関わった当事者から有益な話をうかがい、本研究の今後について意見交換し、協力をお願いした。 以上のような成果をふまえて、本年度は、以下の2回、学会で研究発表を行った。まず、日本基督教学会第62回学術大会(9月10日)において「東アジアのキリスト教についての交流史的研究・試論─帝国周縁部における日本教会の伝道圏形成と喜界島を事例に─」、次に、キリスト教史学会 第65回大会(9月19日)において、「沖縄宣教開始後におけるキリスト教信仰の深化と越境─伊波普猷・伊波月城・比嘉静観らをめぐって─」という題目で研究発表を行った。 これらの成果をふまえて、10月から『福音と世界』(新教出版社)に「南島キリスト教史入門─奄美・沖縄・宮古・八重山の近代とキリスト教─」の連載をはじめた。これは、これまでの研究成果の集大成への準備である。また、本年度は、南島をキーポイントに近代以降の信徒や伝道者の越境と交流の実態を東アジア地域やハワイ・米国本土、そして、南洋群島などに視野をひろげながら明らかにしていくことで、研究のさらなる飛躍と拡大を準備した一年であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
奄美群島の研究については、奄美大島、喜界島、徳之島で重要な研究協力者に出会うことができた。それらの協力者の紹介で文献調査や聞き取り調査については大きな成果をあげることが出来た。特に、喜界島で協力者から提供された戦前期の伝道者の履歴と日々の所感についての文書から朝鮮半島・台湾という帝国日本の植民地と南島伝道の関係が明らかになり、学会発表というかたちで公表することができた。 また、近代以降の南島キリスト教交流史を明らかにする文献史料の収集についてもある程度目途がついた。これらの史料は、南島地域だけではなく、鹿児島本土や福岡など九州地域と、関西、関東などに点在している。本年度までの研究で、それらの史料の存在形態について全体像が把握できた。また、その一部について収集・分析を進めることができた。 最後に、戦後の沖縄キリスト教史については、これまでの研究で新たな史料や事実についてはほぼ解明が終わった段階にある。そこで、現在、その集大成へ向けて、出版の準備をしている。 これらの点から、本研究は、中間点の2014年度の段階でおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、2015年度から後半のまとめと集大成の段階を迎える。戦後米軍占領下の沖縄キリスト教史については、2015年度で著書を出版して、これまでの成果を世に問う。この課題については、これで、一区切り着くと考えている。その上で、まず、この研究を奄美群島のキリスト教会の再建などと関連させて、交流史的な意味づけを行いたい。また、これまで、あまり調査の進んでいないカトリックや聖公会、バプテスト教会についても徹底した研究を行いたい。こうして、戦後史については、研究に“厚み”と“広がり”を燃え足せてゆきたい。 また、戦前の南島キリスト教交流史については、まず。徳之島でのプロテスタント教会の発生・隆盛・衰退の経過をより正確に把握することにしたい。また、プロテスタント教会の跡地がカトリック教会になっている経緯なども調査し、南島キリスト教交流史のひとつの特徴を析出したい。また、これまで、ある程度資料がありながら、充分研究された来なかった奄美大島のカトリックの宣教史についても研究を深めたいと考えている。 同時に、現在、沖縄島のみならず、宮古島や石垣島、与那国島、それに、奄美大島でも米軍だけではなく、自衛隊の配備が検討されている。そのことをふまえて、地域(島・島々)の軍事化・要塞化がキリスト教の布教・伝道にどのような景況を与えてきたかを歴史的に検証してゆきたい。これは、単に、教会形成やキリスト教の浸透・迫害のもんだだけではなく、軍事化と「信教の自由」に象徴される基本的人権の毀損に関わる重要な問題を秘めている。
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Research Products
(9 results)