2015 Fiscal Year Research-status Report
南島におけるキリスト教ネットワークの形成とその展開に関する交流史的研究
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24520073
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Research Institution | Teikyo University of Science & Technology |
Principal Investigator |
一色 哲 帝京科学大学, 医療科学部, 教授 (70299056)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 南島キリスト教交流史 / 軍事化とキリスト教 / 戦責告白 |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年度は、本研究の総括への準備期であった。それで、まず、実地調査については、以下の4回行った。2015年8月に沖縄県の公文書館、県立図書館等で文献調査を行い、戦前期の沖縄や八重山地域の教会形成と関係者の人的交流・越境についての成果があった。次に、12月、群馬県高崎で以下の聞き取りを行った。対象者は戦後、沖縄の諸教会が日本基督教団と再合同する際の日本側の当事者であった岩井健作牧師で、当時の状況や沖縄のキリスト者との交流について話をうかがった。また、2016年2、3月に再び沖縄島で8月と同様の調査を行った。 以上のような成果をふまえて、本年度は、以下の3回、学会で研究発表を行った。まず、日本基督教学会第63回学術大会(9月19日)において「1930年代以降における南島の軍事化とキリスト教」、次に、キリスト教史学会 第66回大会(9月19日)において、「「戦責告白」と沖縄─「周縁」的地域からみた日本基督教団の戦後70年─」、最後に、東アジアキリスト教交流史研究会「第7回 ワークショップ in ROKKO」(1月29日)において、「沖縄伝道における「植村人脈」の展開とその意義─日本、沖縄、石垣島、台湾を貫流する伝道者たち─」という題目で研究発表を行った。 これらの成果をふまえて、昨年度から引き続いて、『福音と世界』(新教出版社)に「南島キリスト教史入門─奄美・沖縄・宮古・八重山の近代とキリスト教─」の連載を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
奄美群島の調査については、他に研究分担者として参加している科研での調査とも関連して、調査がほぼ予定通りに進行している。また、新たに奄美研究についての協力者や助言者を得て、いくつかの文献史料を発見することができた。それらの成果をもとにして、学会発表を行い、徳之島と喜界島の教会形成と展開について文章化した。 また、近代以降の南島キリスト教交流史についての史料の発見と整理についても前年度に引き続き、順調に行われている。それに加えて、戦後の日本本土と沖縄のキリスト教交流史についての聞き取り調査を本土でも行うことができた。 この研究は、沖縄県や沖縄島に限定せず、奄美群島を含めた南島地域の戦前・戦中・戦後にわたる100数十年を視野にすすめられており、そのことによる相乗効果が順調に表れている。また、東アジアや太平洋地域、米国本土などとの交流の実態を探究することで、本研究の順調に広がりと深まりの手応えが感じられる。
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Strategy for Future Research Activity |
2016年度は本研究の最終年度にあたる。戦後、米軍占領下のキリスト教史についての端緒の出版については、前年度からの課題であったが、ほぼ原稿がそろったので、年度内での出版を目指したい。また、戦前の南島全域のキリスト教交流史については、『福音と世界』誌上で2年にわたる連載が今年度の秋に終了する。それにともなって、何度内に、これらの内容を整理して、端緒を出版する。 また、本研究終了後の展開を考えて、米国本土やハワイ島にあるとみられる、南島キリスト教史関連の文献についてもリサーチをはじめたいと考えている。 この他、東アジア地域のキリスト教史研究者、南島地域の宗教に関する研究者、そして、これらの地域の宗教的信念に基づいた平和運動の研究をしている研究者等と積極的に交流することで、本研究に新たな知見を加えてゆきたい。
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Causes of Carryover |
本年度は、調査のための旅費とそこでの複写等の費用のみの支出であった。これは、研究に必要な機材等はそれまでに購入済みで本園土は支出が必要ではなかった。また、史料等の整理についても、人件費・謝金等は必要ではなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、研究の総括の時期に当たるので、これまでの史料整理のための備品や人件費・謝金等が必要である。また、研究成果の公表について、翻訳のための謝金等が必要であると考えている。
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Research Products
(15 results)