2012 Fiscal Year Research-status Report
「狂歌」を端緒とした近世後期の地域文化形成に関する研究
Project/Area Number |
24520077
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高橋 章則 東北大学, 文学研究科, 准教授 (10187990)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 狂歌 / 近世後期 / 地域 / 文化 / 連 |
Research Abstract |
本研究は、「狂歌」に関わる人々が江戸期の地域文化の形成に果たした役割を多角的に検証するものであり、狂歌人に代表される広義の「学問者」の「知」の構造を思想史的に考察することを目的とする。 「狂歌」を特筆するのは、①19世紀に享受層を拡大させた「狂歌」が歌学関連書のみならず儒書や和漢の歴史書・地理書などの知見をフル活用できる幅広い教養の上に立って作成されていたからであり、②「連」と呼ばれる全国的なネットワークを通じて狂歌人は地域に多様な人的・物的資源をもたらしており、「狂歌」の地域文化形成への貢献度が高いからである。さらには近代の地域文化の土壌を用意したとすら見える。 こうした「狂歌」や狂歌人の地域における役割への検証から導出される知見・文化情報は、江戸期に展開した地域文化の再評価のみならず、現今の地域社会再編成の潮流に文化面での視座を提供するものである。 研究の初年度である平成24年度は、本研究の今後の調査の指針を得ることが可能な地域を選択し調査に赴くとともに海外を含む「狂歌」関連資料の調査、必要な基礎文献の整備に努めることに主眼を置いた。具体的には、(1)新潟県上越市の直江津地区と神田地区を重点地区に定め、調査を行った。(2)イタリア・ローマ市に赴き、日本文化関連資料を閲覧し、狂歌関連資料を確認した。(3)諸種の「狂歌本」と複写物を入手し、天保期における「連」の再編成の問題と、狂歌作者としての「遊女」との観点から資料を整理し、論文を作成し発表した。本年度は、研究目的・研究実施計画に則った着実な研究であったと言えよう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実施計画に沿った調査を国内・海外で行うことができ、事前に獲得した資料と新たに入手した資料を整理し、本研究の研究視角を形成する論文として発表することができたことから、本年度の研究は、順調に達成したものと判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、基本的には24年度と同様に、史料調査や検討作業を続行するが、前掲の調査先を足がかりとして調査対象を全国に拡大したい。 その地域として設定するのは、長野県佐久地域である。当該地の資料の一端は、保存状態が整った上田市立上田図書館に存在し、周辺地域には狂歌人をめぐる遺跡や史料保存の情報を伝聞するからである。もちろん検証のモデルとなるフィールドである新潟県上越市をめぐる調査は鋭意続行する。 こうした調査には本調査を前提とした研究情報の入手が必要であり、間接的な研究情報の提供者との交流が不可欠であるから、その打合せも行った上で、調査を実施する。 なお、基礎史料となる「書物」をめぐる方法的・素材的な情報を入手する機会として、諸種研究会・史料調査会を活用したい。例えば、諸領域の研究者が成果を報告する研究会(一橋大学)への参加と研究発表とを予定する。また、海外調査先として、オランダ・ライデン大学ならびにライデン国立民族学博物館を設定し、調査を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、基本的には24年度と同様に、史料調査や検討作業を続行するが、調査対象を全国に拡大するため、旅費の計上を行う。 長野県上田市、新潟県上越市、福島県南会津町がその主要な旅行先となる。 本調査を前提とした研究情報の入手のための、学会・研究会への参加にともなう旅費も計上するが、その主要なものは「書物・出版と社会変容」研究会(一橋大学)であり、複数回の参加を予定している。 一方、海外調査先として、オランダ・ライデン大学ならびにライデン国立民族学博物館を予定しており、当地においては、調査に加え小規模な調査報告を行う予定がある。 なお、本年度も鋭意、原資料の入手とその保存整理にこころがけるため、関連する経費を計上する。
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Research Products
(4 results)