2014 Fiscal Year Research-status Report
近世日本と東アジア諸国における人神祭祀観の比較研究
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24520081
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
井上 智勝 埼玉大学, 教養学部, 教授 (10300972)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 儒教 / ベトナム / 功臣 / 恩祀壇 / 和気清麻呂 / 陳化成 / 陳忠愍 / 薛仁貴 |
Outline of Annual Research Achievements |
近世日本の人神祭祀に対する通史的理解について、儒教祭祀の視点を加味して、国際学会を含む学会での口頭報告・論文によって成果を発表した。従来、御霊信仰や国学の幽冥思想との関連から捉えられてきた日本の人神祭祀は、儒教祭祀の視点を加味して把握されねばならないことを明らかにできたと考える。 中国の人神祭祀施設について、山西省(晋中市・臨汾市・運城市)と陳化成(陳忠愍)関連施設(上海市・福建省厦門市)に対象を絞り、現地調査した。山西省では、明・清以来の町並みを残す平遥において近世の中国における都市と祭祀施設のありかたを体感的に理解するとともに、唐の武将薛仁貴の生誕地とされる河津市で薛仁貴とその妻を享祀する施設を発見した。また、幕末維新期の日本でも著名であった陳化成についての事例を得られたことは、本研究で大きな意味を持つ。鴉片戦争で戦死した陳化成の祭祀は、和気清麻呂ら日本の功臣祭祀と関連させて捉えることができる。欧米の脅威が迫る中、当該期の東アジアに儒教道徳律とそれに基づく人神祭祀の共有があり得たことを明らかにした。 近世東アジアの人神祭祀に対する通史的試論として、日本とベトナムの人神祭祀を含む祭祀(功臣祭祀・恩祀壇など)を比較し、それを両国の自国意識と関連させて論じた。本研究の成果として発表したいくつかの研究の中で、これまで神道国教化と捉えられてきた明治維新期の宗教政策が、実は日本化された儒教祭祀の構築であったという理解を提示することができた。これは、ベトナムはじめ大陸諸国との比較によって、はじめて得られた理解であり、本研究の大きな成果である。神道や神道祭祀を儒教との関連で捉え直す作業は、日本を東アジアの中で把握するために今後試みられるべき作業であり、従来指摘されてきた仏教と儒教の関係も念頭に、儒教を日本宗教の脊梁の一つとして位置づけてゆく必要を提起した点に本研究の意義がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
漢字・儒教文化圏の諸国の人神祭祀を、それぞれの自国意識と関連させながら相互比較することで、近世日本の(その反面として東アジア諸国の)特性を把握するという交付申請書に記した「研究の目的」は、概ね達成できたと考えている。ただ、事情により、報告書の作成と刊行ができなかったため、その作成・刊行が課題として残されている。
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Strategy for Future Research Activity |
成果をまとめた報告書を作成・刊行する。これについては、先に学術振興会理事長宛補助事業期間延長承認申請を行い、承認を得ている。
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Causes of Carryover |
当初計画期間内に報告書を作成・刊行することができなかったことにより、次年度使用額が生じた。これは(1)交付決定後、学内・学外委員への就任があり報告書作成のための十分な時間が確保できなかったこと、(2)論文の刊行が予定より遅延したため、その内容が報告書に盛り込めなかったこと、による。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
報告書作成・刊行費用に充てる。なお、既に学術振興会理事長宛に補助事業期間延長申請を行い、承認を得ている。
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Research Products
(5 results)