2013 Fiscal Year Research-status Report
日本近代における制度の準拠としての主権論に関する基礎的研究
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24520094
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
嘉戸 一将 龍谷大学, 文学部, 准教授 (30346069)
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Keywords | 主権 / 人格 / 憲法 / フランス |
Research Abstract |
2013年度は、前年度に引き続き、主権論の法学における受容と展開に関する調査・研究を継続しつつも、さらに昨今の哲学における論議とその文脈に関する研究にも着手した。すなわち、前者については、国立公文書館や国立国会図書館憲政資料室の所蔵する資料、とりわけ伊東巳代治関係文書中の主権論や法人論(法人としての国家概念関係)に関する資料や、敗戦直後の法制局関係資料中、主権に関する資料や象徴天皇制論に関する資料、さらに天皇機関説事件関係資料の収集を行った。収集した資料の目録化等の整理は進んでいるが、分析については2014年度に本格的に着手し、その成果を随時発表する予定である。後者については、近年の哲学における主権論批判を踏まえ、そこで問題となっている主権論の系譜をたどる研究を開始した。一般的には、二つの系譜があるように確認された。すなわち、一つはカール・シュミットに代表される決断者としての主権者論であり、もう一つは、それと密接に関係するが、ハイデガーに代表される現存在としての主権者論である。とりわけ、決断者としての主権者論は、敗戦直後の法制局関係資料にも見出せるもので、1920年代から1940年代の主権論をめぐる動向がネガティヴに現在の主権論を方向付けていることが明らかになってきたと考えている。また、現存在としての主権者論は、決断者の形象を思わせる部分があるものの、1930年代に日本において提唱された主権概念の脱主権者論の問題関心を共有している可能性があるように思われるため、今後も引き続き研究を深めたい。 また、これらの研究を哲学や歴史学の見地から再検証するため、学外の研究会で報告を行った。すなわち、「主権論と主権者論――〈神〉か、〈代理人〉か」である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
フランスなど海外の主権論批判に関連する図書資料の収集については、当初の計画よりも遅れているが、国内の図書資料及び一次資料については、計画よりも非常に多く収集できており、順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
国立公文書館、国立国会図書館憲政資料室をはじめ、国内のアーカイヴズの一辞資料の収集を継続する。 国内外の主権論・人格論・法人論関係の図書資料の収集を行う。 主権論批判が盛んなフランスなどの研究動向を、国際シンポジウムや国際学会を通じて把握する。 研究成果の発表・刊行等を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
残額が少なかったため、物品費、旅費、人件費等として使用することが困難であったことから生じた。 次年度の交付分と合わせて、計画通り、物品費、旅費、人件費等として使用する予定である。
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