2012 Fiscal Year Research-status Report
天道念仏、天道神社のフィールド調査を中心とする「天道」概念の総合的研究
Project/Area Number |
24520097
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The Eastern Institute |
Principal Investigator |
加藤 みち子 公益財団法人中村元東方研究所, その他部局等, 研究員 (10306524)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 天道神社 / 天道念仏 / 天道 / 修験道 / 神仏習合 / 対馬 / 韓国 |
Research Abstract |
本年度は、修験道、仏教、神道関係の思想史的文献資料の収集および、天道神社のフィールド調査を進めた。フィールド調査は以下の4回行い、天道神社と修験者・修験道の動向との関連を検討した。調査地と調査期間は以下のとおりである。(1)静岡県の伊豆半島(伊豆市、熱海市、伊東市、下田市、三島市)、9/3-13。(2)栃木県(日光市、塩谷町、矢板市、那須塩原市、那須烏山市、茂木町)、12/22-31。(3)茨城県水戸市、2-8-11。(4)静岡県西部(沼津市、三島市、富士市、伊豆の国市、裾野市、富士市、静岡市)3/1-11 本年度の調査の具体的内容は、以下の四点である。①天道念仏と天道神社の分布の関連を明らかにすること、②各地に点在する天道神社の所在を特定すること、③関連する神事ないし仏事の動向を明らかにし、④天道神社の諸行事に参加している人々の意識として、崇拝対象が何であるかということをインタビュー等によって明らかにすること。 調査の結果、天道念仏の主たる分布地区と天道神社の分布地区には関連性があると推定されること、そして両者に関連して活動した宗教者は、修験者ないし修験系の聖であるということが示された。また、天道神社および天道関連神事における、人々の信仰対象への意識としては、漠然とした神仏、漠然としたお天道さまという答えが多くあり、必ずしも天体としての太陽ではない、ということも明らかになってきた。 以上のような調査結果は、「天道」という概念が、修験道と関連するものであるということを提示するものであり、天道神社と関連して修験道の提示する宗教観念が、必ずしも原始的民俗信仰である太陽崇拝と一致するものではない、ということを示唆するものであるという点で、重要な意義をもつものであると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、北関東および中部地区(栃木県、茨城県、静岡県伊豆半島、静岡県中部)の天道神社を中心にフィールド調査を行ったが、各地の天道神社の成立および諸神社の神事・祭礼に、修験道や修験者の動向が深く関与しているということが次第に見えていた。 他方、文献資料によって、修験道思想に神道や仏教がどのような影響を与えているかということを調査したが、道教や陰陽道、儒教との関連もみられ、神仏習合と一口には語れない、独自の思想を形成しているということが明らかとなった。とくに修験道思想に大きな影響を与えたのが、密教と天台本覚思想であるということが明らかとなり、他方、修験者の活動が、地方の社寺の宗教的諸行事あたえた影響についても跡付けられるのではないかという見通しが出てきている。 つまり、研究計画において提示したa-eの5つの項目のうち、b天道神社、およびe修験系聖を中心とする思想史的背景の検討について、本年度の調査で次第に明らかとなりつつあるということであり、おおむね順調な調査状況と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、昨年度に引き続き関東から西日本における天道神社の調査を実施するとともに、研究計画で提示したa-eの5つの項目のうち、aの天道念仏の調査に着手する予定である。とくに天道念仏の流布地に天道神社が存在するかどうかという点にも着目してて調査を進めたい。 次に、時間的余裕があれば、cの対馬の天道信仰およびdの韓国の天道大明神の調査にも着手したい。 また並行して、昨年度収集した天道神社の資料および、修験道、仏教、神道ほか諸宗教思想の資料の読解分析を進め、天道概念と諸宗教との連関について調査を進める予定である。 なお、H25年度日本思想史学会パネルセッションにて、成果の一部を発表する予定である。また、H25年度日本民俗学会にて、成果の一部を発表する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度もフィールド調査を3~4回(関西中部地区2回、北関東2回)実施、学会発表2回(日本民俗学会・新潟、日本思想史学会・宮城)するため、旅費約45万円を必要とする。 また、収集したデータの記憶媒体ほか、PC関連部品購入のため約20万円、修験道ほか思想関連図書購入のため約10万円程度を使用予定である。 さらに、ビデオ編集・テープ起こし作業等謝金10万円、その他コピー代・印刷機のインク代・資料収集のための送料等5万円程度を使用予定である。
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Research Products
(4 results)