2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24520104
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
鈴木 賢子 東京芸術大学, 美術学部, 専門研究員 (20401482)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | W. G. ゼーバルト / イメージとテクスト / 記憶表象 / アート / 歴史 / 文学 / 美学 / ドイツ |
Research Abstract |
本研究の主要な課題は、作家W. G. ゼーバルトの作品研究である。より広い射程においては、歴史をいかに表象し叙述するかという問題をめぐって、文学、アート、歴史学を横断する理論的パラダイムの構築に資するものである。本研究の特色は、従来型のテクスト研究に留まらずに、作品のテクスト中に配された視覚イメージおよびそれらイメージ群とテクストの関係という側面から作品にアプローチすること、現地調査によって作品が参照している歴史・文化・地誌学的バックグラウンドを具体的に解明することにある。今年度はこうした理論研究と現地調査の二面展開によって、本研究の目指す、歴史記憶のオルタナティヴな想起をめぐる理論構築に向けて突破口を開くことができた。 理論研究:①ゼーバルト作品における視覚イメージの配列を、フロイトの「徴候」やフーコーの「類似」の概念を参照しながら分析することによって、ゼーバルト作品独特の意味生成のありかたを把握しようとした。②上記のイメージ論的研究の結論を踏まえてさらにイメージとテクストの関係を掘り下げた。テクストと視覚イメージに共通して現れる特定のモティーフを分析し、それらが想起のサインとして作品に布置されているという解釈に到達した。 現地調査:今年度は、パリ、ロンドンおよびイースト・アングリア地方において、関連する事跡を調査し、アーカイヴでの資料収集を行った。この調査による成果の一部は、2013年3月刊行の論文「W. G. ゼーバルトにおける想起の空間」に活かされている。次年度の研究においても活用する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
現地調査が実現できたことも相俟って、今後の研究の土台となる大きな成果が得られた。2013年3月に刊行した論文で論じたテーマは、確実にあらたな展開へとつながるものである。初年度の達成としては満足の行くレベルであると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
理論研究や現地調査によって新たな知見が得られることで、研究が当初の計画に留まらない形で進展している。しかしそのような可能性については研究計画当初に想定していることであるので、このまま研究を推進する。同時に、研究の全体図と構成を練り直すことが課題となる。 また、シンポジウムの企画や識者との交流を積極的に行い、研究活動の幅を広げていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
春休み中の現地調査を予定していたが、残額不足のため計画を変更し、次年度分として保留した。 次年度において、国際学会への参加と現地調査を控えており、渡航にかかる費用の割合が高くなるので、旅費に充当する。国内での学会・シンポジウム・研究会参加、国内各所での見学調査にも適宜支出する。
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