2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24520106
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
秋庭 史典 名古屋大学, 情報科学研究科, 准教授 (80252401)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 泰博 名古屋大学, 情報科学研究科, 准教授 (50292983)
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Keywords | 触覚 / 触譜 / 美学 / マッサージ / 計算美学 / 自然計算 / アルゴリズム / ダンス |
Research Abstract |
25年度は、1.触覚刺激のさまざまな評価に向けた研究、2. 触覚、視覚、聴覚という感覚相互のあいだの再編成の可能性を考察するための準備となる研究、の2つをその内容としていた。1.については24年度に購入した機材を使用した計測系の研究が続いており、最終年度まで行う。2.については大きな成果があった。第一に図書出版である(鈴木理絵子著/鈴木泰博監修(2013)『ファセテラピーメソッド』春秋社。Yasuhiro Suzuki & Rieko Suzuki (2013), Tactile Score: A Knowledge Media for Tactile Sense, Springer)。前者は触譜と触覚刺激に関する一般書、後者は、触譜の概要と形成過程そして触覚刺激ワークショップや実験の成果をまとめたものである。英文でSpringer社からe book も加えて出版できたことは、本研究を国際的に発信するための重要な成果となった。第二に、触譜を媒介にした感覚変換の試みの進展である。24年度も触譜を用いて触覚刺激を音楽に変換する試みを発表していたが、25年度この試みはさらに進展し、最終的に2014年1月ベルリンで初演されたダンス/映像/音響/振動作品「MatchAtria」への参加に結実した。また2013年11月17日に触覚美学の研究者とサウンドアートの触覚性の研究者を講師に招き講演会(東京八重洲ホール)を行ったほか、10月24日には人工知能学会合同研究会にて触譜と触覚をテーマにした研究発表会(慶応義塾大学日吉校舎)、10月27日には身体美学研究者R.Shusterman教授を招き講演会研究発表会を行った(慶応義塾大学日吉校舎)。また内外の査読付き国際会議(2013年5月KES-IIMSS、ポルトガル)、国際研究集会(2014年3月8thIWNC、広島、等)で研究発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記「研究実績の概要」でも記したように、触譜を媒体(メディア)とした諸感覚の変換に関しては、きわめて大きな進展があったと考えてよい。国内外における二冊の図書出版をはじめ、ベルリン、バルセロナ、京都等で公演されるダンス/映像/音響/振動作品である「MatchAtria」への触譜の参加は、本研究の成果が、研究者のみならず、分野を異にするアーティストから見てもきわめて興味深いと評価されてのことであり、それ自体実験的で、本研究のひとつの到達点を示す出来事であると考えられる。もちろん、公演の実施を経たのち、長期に渡ってさらなる向上を期するのは言うまでもない。また、さまざまな国際会議で発表を行うたびに、触譜ならびに計算美学への注目が集まり、今後もいくつかのコラボレーションが模索されている。他方、触覚刺激の評価に向けた計測系の構築については、振動系研究者を交えた地道な研究が続いている。内外の国際会議や研究会における研究発表、論文発表もコンスタントに行うことができている。以上より、全体として、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
26年度は最終年度にあたるため、研究全体のとりまとめに向けた活動を行う。具体的には次のとおりである。 これまで研究の柱は次の二つであった。ひとつは、触覚刺激による実験計測系の構築に向けた研究、もうひとつは、触覚・視覚・聴覚という感覚相互の変換とそれによる感覚の再編成の可能性の考察である。それぞれの研究からは、すでに一定の知見があがってきている。そのため、26年度は、それらの知見を基に、この二つの柱を「美学(計算美学)」という観点から総合的に考察し、研究を最終的にとりまとめていく。美学(計算美学)の立場からとは、秋庭2011(あるいはSuzuki&Nakagaki(eds.)2013)で研究代表者の秋庭が表明している美学上の見地から、という意味である。近代美学によって、またそれを受けた大方の現代の美学芸術学研究によっても論じられることのなかった、触覚の美学構築の可能性を目指すものである。 また、最終年度であるため、年度の終盤に、3年度に渡る研究成果を市民に広く知らせるための公開シンポジウムを開催する予定である(シンポジウムの内容は、報告書のかたちで簡潔にまとめる予定である)。さらに、25年度11月に行った、触覚美学研究者とサウンドアートにおける触覚性についての研究者の講演をまとめたものも、公刊する予定である。これらにより、触覚美学の歴史的意義と現代における可能性の一端が、多角的に明らかになるものと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
「前倒し請求」をした際の説明の繰り返しであるが、研究の進展に伴い、振動系研究者とのディスカッションが当初の予定以上に重要になってきた。ディスカッションのために、こちらから先方に出向いて行くことが必要であるため、打合せ先の研究機関が設置されている北海道地区への出張が何度か行われた。直接的にはそのことにより、次年度分の研究費を(30万円分)前倒し請求することとなったものである。しかしその額が、前倒し請求をした時点で想定したよりも大きくなかったため、次年度使用額が生じている。 26年度は最終年度であるが、触覚刺激の計測系構築のための研究は引き続き行われるため、被験者ならびに実験補助者に対する「謝金」を支払う予定である。また、最終年度であるため、研究成果を広く知らせるための公開シンポジウムを開催する予定である。それに伴う「会場費」、講演者「謝金」「旅費」を支払う予定である。さらに、25年度に開催した講演会をもとにした論文集の作成も行うため、そのために必要な支払いを行う。当然のことながら、研究成果の発表のために必要な「旅費」、「外国語翻訳、校閲」のための謝金を使用する予定である。同様に、触覚刺激計測系構築のために必要な各種「消耗品」の購入も行う。
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Research Products
(12 results)