2013 Fiscal Year Research-status Report
スマトラにおけるシュリーヴィジャヤ・マラユに関する美術史学的調査研究
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24520111
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
伊藤 奈保子 広島大学, 文学研究科, 准教授 (20452625)
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Keywords | シュリーヴィジャヤ / マラユ / スマトラ |
Research Abstract |
当該年度は、初年度、昨年度までに収集した出版資料及び博物館からの情報の蓄積をもとに、2月末から約1ヶ月間、マレーシア、ジャワ、スマトラ、バリの調査を行った。博物館については、調査対象の館に事前に申請書を送付し、許可を得られた館においては、ガラスケース、収蔵庫等から作品を適宜移動し、簡易スタジオにて写真撮影、測量、調書を作成し、館所蔵資料をコピーさせて頂いた。遺跡については、写真撮影、測量等を行った。 まずマレーシアでは、北部のブジャン・バレー考古学博物館、ブジャン遺跡群、発掘中のスンガイ・バトゥ遺跡群、ケダ州立博物館、また中部ではクアラルンプール国立博物館、マラヤ大学東洋美術館にて調査を行った。ジャワではジャカルタ国立中央博物館にてスマトラ、バリ地域から出土した石像、鋳造像、碑文等について確認を行った。スマトラでは、北部のメダン州立博物館、パダン・ラワス遺跡群、バハル博物館を調査、中部ではムアロ・タクス遺跡群を調査、南部はジャンビ州立博物館、ムアロ・ジャンビ遺跡考古学資料館、ムアロ・ジャンビ遺跡群、またパレンバンはパレンバン・バラプトラデワ国立博物館、シュリーヴィジャヤ博物館、スルタン・マフムド・バダルッディンII博物館、シュリーヴィジャヤ考古研究所を調査し、バリではスマトラ等の建造物との比較対象としてウブド地域の遺跡調査を行った。特にスマトラでは車と船を用いて縦断する形態をとり、地形についても確認を行った。これらの調査から、残存する遺跡の建造物の保存状態は崩壊、または復元がされており、当初の様式を推しはかることが困難であることが判明、また資材は焼結煉瓦が多く、石造は像やマカラなどに限られることが確認された。遺跡から少数ではあるが密教法具や密教尊像が出土されており、マレーシアからスマトラ、ジャワ、バリにかけて、ある種の密教が存在していた可能性を導き出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一昨年度、昨年度は体調不良により、長期調査が行えなかったが、その間、遺跡、石碑、石像、鋳造像等に関して入念な資料収集を行い、それをもとに当該年度はマレーシア、スマトラ、ジャワ、バリの調査を効率よく、且つ綿密に行うことができた。現段階で確認できる石像、鋳造像に関しての様式の変化についても考察を行っている。これまでの成果を平成26年度、学会発表、論文にまとめる予定である。印仏学会第65回学術大会「南スマトラ・ジャンビ出土金銅四臂観音菩薩立像について」、密教図像学会「スマトラにおけるマカラの特徴」(仮題)について発表予定。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である平成26年度は、8月に再度マレーシア、スマトラ、及びタイの調査を予定。マレーシアは、クアラルンプール国立博物館、マラッカ歴史博物館を主眼におき、スマトラはメダン、パダン、ジャンビ、パレンバンの資料館、博物館の調査、またタイはバンコク国立博物館、スラー・タニー地域のワット・ボロム・タート遺跡、ワット・ケーオ遺跡、ワット・ロン遺跡、ウィアンサ遺跡等の調査を行う予定。スマトラに関しては、メダンとパダンを主に調査を行う。今回メダン州立博物館にて、スリランカ仏坐像や鋳造像が確認できたことから、様式等よりスリランカとの関係性を考察したい。また、パダンについては、ムアロ・タクス遺跡において金剛杵やターラ立像等が出土し、パダンの西スマトラ博物館に所蔵されているという情報を現地で得たこと、またジャカルタ国立中央博物館所蔵、石造不空羂索観音像(Inv.No.D198,6469)、 アディトゥヤヴァルマン像(Inv.No.6470,4915)もこの地域から出土していることから調査を行うこととする。 タイ、マレーシア、スマトラ、ジャワ、バリにおいて、残存する遺跡、石碑、石像、鋳造像の詳細な検討を行い、シュリーヴィジャヤ・マラユに関する論文を著していく。
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