2014 Fiscal Year Annual Research Report
スマトラにおけるシュリーヴィジャヤ・マラユに関する美術史学的調査研究
Project/Area Number |
24520111
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
伊藤 奈保子 広島大学, 文学研究科, 准教授 (20452625)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | シュリーヴィジャヤ / マラユ / ジャンビ / 密教 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、未だ明確にされていないシュリーヴィジャヤ、マラユ(現在の南スマトラ・Jambi)の一解明を目指すものであった。3年をかけてスマトラを中心に、タイ、マレーシア、ジャワ等の残存する遺跡、石像、及び鋳造像等の調査を行い、文献資料と照合し、それらを分析、考察することにより宗教形態の体系化を試みた。スマトラ調査は北部地域がPadang Lawas遺跡群、Medang州立博物館、Biaro Bahal資料館、中部地域はMuara Takus遺跡群、Adityawarman博物館、南部地域はMuaro Jambi遺跡群、Jumbi州立博物館、Muaro Jambi遺跡考古学資料館、義浄記述とされる僧院跡、PalembangのBalaputra Dewa国立博物館、Sriwijaya博物館、Sultan Mahmud BadaruddinⅡ博物館、Srivijaya考古研究所等において行った。 その結果、現在スマトラは残存する遺跡の建造物の保存状態は極めて悪く、崩壊、また復元がされ、当初の様式を推しはかることが困難であることが判明し、資材はジャワ島と異なり、焼結煉瓦が多数を占め、石造は像やマカラ等に限られることが確認できた。また像は仏教、初期密教像がみられ、石像の多くが2mを超す巨像で顔面が四角く、全体に肉厚で動きが少ないこと等が特徴であり、守門像など忿怒尊は東部ジャワの像の流れに近いものと考察された。鋳造像はいずれも精緻な造りで、欠損した坐像でも25cmと大きく、顔面の様式はインドのPala朝かマレー半島のDvaravati様式に近いものと考えられた。以上から、シュリーヴィジャヤ、マラユでは7世紀頃から仏教が、その後初期密教、文献等から金剛界系密教が信仰された可能性があり、像の様式からジャワ島とは異なる流れで、マレー半島にその関連性があるものと推察した。
|