2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24520113
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Research Institution | Kanazawa College of Art |
Principal Investigator |
水野 さや 金沢美術工芸大学, 美術工芸学部, 准教授 (10384695)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 遼塔 / 金塔 / 仏頂尊勝陀羅尼 / 一切如来心秘密全身舍利宝篋印陀羅尼経 / 遼寧省 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、遼・金・高麗において建立された仏塔の第一層塔身に付された荘厳モティーフを研究対象とし、初期仏教以来の舎利信仰とは異なる、当代仏教信仰の中心であった五台山における華厳密教による新たな舎利信仰が、仏塔にどのような特徴として現れ出ているのかについて、実証的な考察を行うことが目的である。平成26年度は、遼寧省東部の遼塔・金塔の実地調査を行った。これにより、戦後報告されることがほぼ皆無であったこの地区の遼塔・金塔の現状を認識することができた。 遼塔および金塔の第一層塔身には、(一定のヴァリエーションを保ちつつ)様々なモティーフが施されている。これは、塔を表面から荘厳するもので、功徳の増幅を目的とし、八大霊塔、仏像、宝塔・経幢、法偈などが(法舎利として)が表される。一方、塔内の天宮・地宮に様々な宝物を納入するが、これももちろん功徳の増幅を目的とし、仏頂尊勝陀羅尼経幢(一切の如来の全身舎利として)、高僧・王族の遺骨(僧舎利として)などが埋納される。そのような塔のあり方を保証する背景には、真身舎利の他に法舎利(経典・仏像など)を用いても仏塔建立が可能とする不空訳『一切如来心秘密全身舍利宝篋印陀羅尼経』、および、一切の如来の全身舎利のなかで仏頂尊勝陀羅尼を最尊・最勝とみなす仏陀波利訳『仏頂尊勝陀羅尼経』の存在が大きい。すなわち、遼塔・金塔とは、その立地状況も含め、それらの功徳を効率よく視覚化、より顕著化し、功徳を保証する効果的な手段としての位置づけが大いに期待されていたと理解できよう。 なお、当初計画においては、この地域の実地調査は平成25年度に行う予定であったが、日中関係等の事情により不可能であった。そのため、当初の研究計画の韓国における高麗時代の仏塔の実地調査が遂行できず、言及することができなかった。高麗仏塔とあわせ、今一度総合的に考察することが、残された大きな課題である。
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Research Products
(3 results)