2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24520123
|
Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
長谷 洋一 関西大学, 文学部, 教授 (60388410)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 近世仏師 / 造像と修復 / 在地仏師 / 開帳 / 居職と出職 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、全国に点在する近世仏師の造像、修復等の事績を仏師ごとのデータベースを構築したうえで、京都仏師、江戸・大坂仏師、在地仏師からみた近世仏師の活動動向について解明しようとしたものである。 本研究の内容として、(1)近世仏師事績データベース(http://www.busshi.net/search.cgi)を構築し、約8千件の入力作業を終了した。データベースは一昨年度に一般公開し、以後も追加、補綴を行っており、研究基盤の基礎的資料を提供することができた。既に『多可町の彫像』(多可町教育委員会)や『護国山曹源寺』(岡山県立博物館)など各地の仏教彫刻史の研究や調査報告書等の作成に供されている。 次にデータベースを利用して、(2)京都仏師、江戸・大坂仏師、在地仏師の活動圏とその内容を通して各仏師間の相互の関係について分析をすすめた。 京都仏師の頂点に位置する七條仏師は享保の改革による幕府関係の造像需要の減少、康祐以後の七條仏師内の混乱を受けて、秋田、山形など東北地方へ赴き、現地での政策に努めた。その際、在地仏師との協力が不可欠となり「門弟」「門人」などの肩書で、京都仏師に繋がる在地仏師が活動を活発化させていく。さらに京都町仏師も、寛政11年の「大成令」での像高制限や数量制限を受けて地方へと進出を計っていったことが明らかとなった。造像の委縮傾向を受け、江戸・大坂仏師も地方寺院の開帳における修復事業へ積極的に関与し、地方寺院の周辺地域に修復事業を拡大する。近世京都仏師、あるいは江戸・大坂仏師の動向は、それまでの在地仏師の活動を大きく変化させたことが理解できた。 今後も引き続き近世仏師事績データベースの追加、補綴につとめ、近世仏像彫刻研究の基礎的資料としての精度を高めつつ、個々の在地仏師の動向解明の貴重な手がかりとなるものと期待できる。
|
Research Products
(2 results)