2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24520129
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所 |
Principal Investigator |
小林 公治 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 企画情報部広領域研究室, 室長 (70195775)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 螺鈿 / 技術史 / 対外交流史 / 漆工品 / カンボジア / タイ / スペイン / ポルトガル |
Research Abstract |
本年度は、高麗時代螺鈿器を中心とした朝鮮半島螺鈿漆器の調査を日本国内の所蔵諸機関(東京国立博物館・高麗美術館・大和文華館・奈良国立博物館・北村美術館)および個人宅で、琉球螺鈿漆器および製作技術に関する調査を沖縄県内各地で(浦添市美術館、沖縄県工業技術支援センター、首里城公園、古美術店、工房2か所)、室町時代螺鈿鞍の調査を豊川市兎足神社にて、日本の近世輸出螺鈿漆器に関する調査を国内諸機関(南蛮文化館・逸翁美術館・岐阜市歴史博物館)および個人宅にて、また海外ではスペイン・ポルトガルの各国内諸機関・個人宅にて、また中国の清代螺鈿家具類の調査をシンガポール・マレーシア国内諸機関にて、さらにカンボジアおよびタイの螺鈿漆器およびその伝統的製作技術に関する調査をカンボジアおよびタイ国内の諸機関・諸工房で実施した。 こうした調査で得られた成果の一部については、ドイツ・ミュンスターの漆工芸博物館(Museum für Lackkunst)で開催された朝鮮半島螺鈿漆器特別展に合わせて刊行された図書『Korean Lacquer Art ―Aesthetic Perfection』(Hilmer Verlag GmbH社刊)に、Turban Snails and Abalone Shells ―The technique of mother-of-pearl inlay on the Korean peninsula―(pp.72-83 2012年10月)という題名で論文発表した。また昨年度までの科学研究費による調査成果を「唐代螺鈿鏡・平脱鏡制作技術に関する検討―螺鈿史研究の視点から―」『技術と交流の考古学』(同成社刊 pp.74~85, 2013年1月)として論文発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、沖縄を含む日本国内各地の博物館・美術館や所蔵者、また東南アジア、ヨーロッパ(スペイン・ポルトガル)においても積極的に各時代地域の螺鈿作例を多数調査することができた。これらの調査は非破壊のいわゆる熟覧調査ではあるが、完存品あるいは保存状態の良いものだけではなく、博物館等での展示に出品されることが無い様な状態の悪いものを多数含んでおり、こうした資料からは各種螺鈿器の製作技術について詳しい情報を得ることができるため、本研究にとって重要なものであると言える。 また、地域間交流史に関する調査視点については、これまで日本国内ばかりか、海外においても認識されていなかったクメールの螺鈿器について近世から近代にかけての資料を実見することができ、その存在は広くしられているタイの螺鈿器との関係について検討を迫る存在であることが初めて理解されるにいたった。さらに、日本の南蛮漆器に見られる螺鈿技術が朝鮮半島の螺鈿の技術と深い関係にあることが具体的に理解され、今後その具体的な契機や経緯について考察を深める大きな出発点とすることができた。 以上のような理由により、現在までの達成度はおおむね順調に進展している、と評価することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究については、今年度実施し、大きな成果や見通しを上げることができた側面を中心に、一層の具体的事例の収集や、見通しの確認などを行う方向で、各地での調査を進めたい。 また、海外各地での調査で散見されているイスラム世界における螺鈿作例について、より具体的な情報、認識を得るべく、西アジア地域を含む現地調査などを実施したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、国内各地博物館等での調査、海外ではアメリカにおいて開催される国際シンポジウムでの発表や博物館等での調査、またヨーロッパ、東南アジア、西アジアでの調査などを実施したいと考えており、研究費はこうした調査旅費を中心に、海外研究協力者への謝金や貴重な海外刊行図書や消耗品類の購入等に使用したいと考えている。
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