2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24520129
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Research Institution | 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所 |
Principal Investigator |
小林 公治 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 企画情報部, 室長 (70195775)
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Keywords | 螺鈿 / 日本本土 / 南蛮漆器 / ポルトガル / スペイン / 中国 / トルコ / 韓国 |
Research Abstract |
本年度は、滋賀県内・愛知県内・宮城県内の諸博物館・美術館・資料館等の諸機関で、日本所在アジア螺鈿器の調査を実施したほか、螺鈿や漆器に密接に関連する特別展の調査、また情報の入手に努めた。加えて海外では、スペイン(マドリッド)における日本製輸出螺鈿漆器に関する特別展の調査、ポルトガル国内各地(リスボン・ポルト・マデイラ諸島ほか)における日本製輸出螺鈿漆器等の調査、オランダ(アムステルダム)における朝鮮半島螺鈿漆器ほかの調査、中国(南京・揚州・蘇州・寧波ほか)における中国螺鈿器及び螺鈿工房の調査、台湾(台北)における個人蔵螺鈿漆器コレクション調査、トルコ(イスタンブール・ガジアンテプ)における西アジア螺鈿器および螺鈿工房調査を行った。また併せて各地では多くの研究者や螺鈿職人また関係者との協議・検討を実施した。 こうした調査で得られた成果のうちの一部については、USAのバッファロー・ニューヨーク州立大学で開催されたアジアの漆国際シンポジウムにおいて、「Sumpu and Yokohama Aogai-zaiku ―Introduction of unknown Nagasaki Style Mother-of-Pearl Inlay Lacquer ―」という題名で口頭発表(赤堀郁彦氏との共同発表)し、発表要旨による報告を行った。 こうした今年度の調査については、翌年度に計画している調査結果を加えて今後逐次成果を公表していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、日本国内各地での調査に加え、主に南蛮漆器が伝世あるいは所在するポルトガル、マドリッド等において精力的な調査を実施し、この結果これまでの研究では認識されていなかった重要な知見を得ることができた。またかねてよりの懸案仮題であった西アジアの螺鈿に関しては今年度初めてトルコ国内で調査を実施することができ、その概要を把握することができた。さらに台湾においてはこれまで知られていなかった中国製螺鈿を中心としたまとまった個人コレクションの存在と内容について確認することができた。このように、今年度の調査によって、これまで知られていない新知見やまとまったコレクションの確認などをすることができ、今後の研究進展に対する見通しを得た。 この他、調査成果の公表については海外の研究会において、やはり国内外においてほとんど知られていない横浜と静岡で造られた輸出用螺鈿漆器について報告を行うことができた。 以上のような理由により、おおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究については、特に以下の各点について力点を置いて推進したい。 ・トルコおよびパレスチナ地域の螺鈿調査:第2年次に初めて調査を実施できたトルコの螺鈿は、当初予想していたよりも技術的・様式的にかなり多様な様相を持つものであった。第3年次にはさらに調査を重ね、トルコ国内いくつかの螺鈿工房調査による諸様相についての様式・技術的整理、また近世以前の古螺鈿資料把握を進め、より具体的なトルコ螺鈿史の把握に努めたい。またヨーロッパ各地に所蔵されている事例から伺われたパレスティナでのキリスト教具を中心とした螺鈿について、イスラエル国内の博物館や寺院、また工房等の調査を実施する計画であり、まずその現状と実態について大まかな把握をしたい。 ・南蛮漆器調査および研究:南蛮漆器はこの数年の展覧会ブームからその存在こそ広く知られるようになったが、その詳細内容についてはあまり理解が進んでいない。本年次はスペインおよびイタリア国内での調査を実施すると共に、これまでの調査成果を総合して編年案の構築などについて研究発表等を行って行きたい。 ・朝鮮螺鈿の研究:朝鮮半島の螺鈿については研究者の少なさもあって細かな様式特徴や編年の把握はかつての研究成果からあまり進んでいない。本年次は特に朝鮮時代前半の螺鈿について各地に残る螺鈿漆器事例を集成すると共に所蔵者の確認を行い、できるだけ多くの事例の実見するように務め、東アジア各地の螺鈿との相互比較を可能とするような詳細編年の構築に向けて努力したい。 ・各地の螺鈿調査 以上述べた以外にも、日本本土やアジア各地の螺鈿について可能な範囲で随時調査を実施し、調査事例の追加に務めたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
旅費、特に海外の滞在費について年度末に残額不足が生じないように減額申請を行って節約に努めたため、結果として8万円ほどの次年度使用額が生じた。 本年度は本助成最終年度であり、この額を含めた全額を先に上げた予定に従って有効に支出する計画である。
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