2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24520129
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Research Institution | Independent Administrative Institution National Institutes for Cultural Heritage Tokyo National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
小林 公治 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, その他部局等, 室長 (70195775)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 螺鈿史 / アジア / 対外交流史 / 技術 / 漆 / 樹脂 / 象嵌 / mother of pearl |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、当初からの目的であったアジア螺鈿史全体像の理解を大きな目標として、古代より現代まで造られてきたアジア各地域・各時代の螺鈿様相や製作技術の調査を実施した。また調査結果については迅速な報告・公開に努めた。 東アジア地域では、日本の桃山時代輸出螺鈿漆器について継続的にポルトガル・スペイン・イタリアで調査を実施した。また中国の螺鈿史把握を目的として、2作例のみの遺存が知られている五代十国時代螺鈿器の実見調査や、これまでほとんど学術的関心が持たれていない清代を中心とした中国製木地螺鈿の実態について、シンガポールやマレーシアなどにおいて調査を実施した他、江南各地の螺鈿工房で制作技術調査を行った。また朝鮮半島螺鈿史、特に高麗時代螺鈿や朝鮮時代前期資料分析のため、日本国内各機関やRijks Museum、また沖縄などで調査を実施した。東南アジア螺鈿については、ほぼまったく存在が認識されていないクメール文化の螺鈿についてカンボジアで初めて調査を行いタイ螺鈿との関係などについて検討した。南アジアのうちインドの螺鈿資料については、アメリカの博物館にて調査を実施した。さらに西アジアの螺鈿については、初めて現地調査をトルコ、パレスチナの2地域で実施したが、螺鈿史上極めて重要と予測されるシリア螺鈿についても、これら両地域の所蔵品や聞き取り調査を行い情報入手に努めた。 上記の調査により、比較的研究が進む東アジア地域の螺鈿史については今後の詳細研究を行うための多くの基礎情報が得られた。また世界的にもほとんど認知されていないクメール文化やトルコ、パレスチナの螺鈿などについての概要を把握でき、現地調査が困難な近現代のシリア螺鈿についてもおぼろげながら情報を得た。こうした知見は以後、螺鈿史復元構築を進める上での貴重な情報であり、また各地間の相互影響関係を考える上でも重要な成果が得られたと評価できる。
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