2013 Fiscal Year Research-status Report
古代ギリシアの音階理論のヨーロッパ中世思想への浸透
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24520134
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
山本 建郎 秋田大学, その他部局等, 名誉教授 (30006572)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高木 酉子 朝日大学, 歯学部, その他 (20624399)
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Keywords | トノス / ハルモニア / オクターヴ / テトラコード / 四分音階 / 陰影音階 |
Research Abstract |
研究課題はボエティウスの『音楽論』全五巻に依拠して古代ギリシアの音楽理論がいかに中世ヨーロッパ思想に受け容れられたかを具体的に究明することであるが、当書は古代ギリシアのアルカイック期から古典期を経てヘレニズム・ローマ期に至る著名な理論家たちの理論を吸収し、ボエティウス流に体系化したものであるので、古代ギリシアの哲学者や数学者のほかに著名な文人思想家たちの著作の検討は不可欠である。筆者はこれまで当基金の補助の下にアリストクセノスとプトレマイオスの理論を究明し、古代ギリシアの楽理の要諦を抑えて、今回の研究の基礎を固めた。古代ギリシアの楽理は哲学と密接な関連を有するので、今回は哲学者として知られるアリステイデス・コインテリアノスの『音楽論』の訳注に全力を注ぎ、ようやく完成するに至った。当書は楽理篇に加え、教育論的考察と自然学的考察から成るので、古代ギリシアのヘレニズム・ローマ期における音楽に関する総合的な知見を得ることができた。失われた音の復元に至ってはいないけれども、音楽を享受した人々の精神史的な心理状況と思想的背景がかなり見えてきたので、音の復元の素地は整ったといえよう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目標のボエティウス『音楽論』全五巻が典拠としているギリシアの音楽書のうちの最大の部分を占めるアリステイデスの訳が完成し、古代ギリシアのヘレニズム・ローマ期における具体的な音楽状況が見えてきたことによる。
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Strategy for Future Research Activity |
ボエティウスが依拠しているとみられる古代ギリシア語圏の理論家には他にも何人かいる。さしあたって、数学者として知られるニコマコスの『ハルモニア論提要』と音楽家のクレオネイデスの『ハルモニア論入門』に定位して、ローマ期の理論状況を押さえ、訳注作成に専念する。その上で、ボエティウスがいかにそれらを吸収し、彼流に体系科したかを論ずる。グレゴリオ聖歌の実際の音律を調べ、ボエティウスの思想がそこにいかに生かされているか(あるいはいないか)を考察する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度に大幅な海外研修を予定している。それに備えて、本年度は研究旅費は最小限に抑えた。物品購入も、必要最小限にとどめた。 七月にギリシアにおける研究集会に参加し発表を準備している。さらにその際、ウィーンに足を延ばして、同業の研究者と意見交換する。
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