2015 Fiscal Year Research-status Report
古代ギリシアの音階理論のヨーロッパ中世思想への浸透
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24520134
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
山本 建郎 秋田大学, その他部局等, 名誉教授 (30006572)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高木 酉子 朝日大学, 歯学部, その他 (20624399)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ハルモニア / トノス / メセー / パラメセー / トリテー |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に仕上げるはずのニコマコス『エンキリディオン(ハルモニア論提要)』の訳稿の完成に全力を注いだ。当著作は短編ではあるが思考が重層的に入り組んでおり難解で、その分析的な解説が必須である。10月には古典文献学の研究会における発表の機会を得て、解説を更に大幅に拡大した発表用の草稿の完成も果たした。 これで、古典ギリシア語関係の主要文献の大要は押さえたことになり、研究対象をラテン語文献に移した。目標はボエティウスの『ハルモニア言論』全5巻であるが、手始めに、その媒介にもなると見られたアウグスティヌスの『ハルモニア論』(邦訳『アウグスティヌス全集』に所収)の訳文を原文に照合して検討した。 さらに、関連するアリストテレスの方法論に関する著作の刊行(『アリストテレス方法論の構想』)を果たした。当書はアリストテレスの『分析論後書』に関する旧稿八編をまとめたもので、一書に再編するに当たって全面的な推敲と補完に努めた。当書はアリストテレスに関する研究書であるが、アリストテレス独自の音楽思想が表明されている点で、当研究主題にも関連すると見られる著作である。これは当初の計画には加えなかったものであるが、ニコマコスの楽理思想を考えるに際して関連する事項が大いにあると判断されたからである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度の遅れを取り戻すべく努めたが、予定外のアリストテレス書の刊行にかなりに時間をかけたので(先にも記したように、楽理研究に関連する処が大きいと判断されたからである)、楽理研究の遅れとしては昨年度の状況を脱しえなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
計画書に記した最終目標(ボエティウス『音楽論』全五巻の翻訳と解説)の完成に全力を注ぐ。研究の進捗状況はやや遅れを見ているが、当ボエティウス書は古代ギリシアの楽理書を念頭に置いた解説書であるので、アリストクセノスやプトレマイオス、ニコマコス等を押さえた現今の状況においては、比較的スムースに進行できると予測している。
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Causes of Carryover |
アテネ大学のプサルダキス教授(古代ギリシア音楽の研究者)を訪ね意見を交わす計画を立てていたが、先方の事情で取りやめとなったので予定した旅費が不要となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
28年度に予定されている古代ギリシア音楽に関する学術会議へ参加するための旅費として使用する。
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