2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24520135
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
阿部 宏慈 山形大学, 人文学部, 教授 (10167934)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 唯史 山形大学, 人文学部, 教授 (20250962)
清塚 邦彦 山形大学, 人文学部, 教授 (40292396)
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Keywords | 国際研究者交流 / 国際情報交換 / 国内研究会 / 国際映画祭参加 |
Research Abstract |
第二年度は、具体的な視覚表象の事例調査と分析を進めた。 阿部は、7月にマルセイユ映画祭に参加し、現代ドキュメンタリー映画における身体的表象の問題を研究し、映画祭に参加した研究者、批評家、作家と意見交換をおこなった。7月2日には映像作家大久保拓朗氏を招き、研究会を開催した。10月には、山形国際ドキュメンタリー映画祭において、チリの映画作家イグナシオ・アグエロ監督の作品上映と討議を日本映画大学と共催した。分担者の中村唯史は山形大学人文学部山崎彰教授らとともに「東欧ドキュメンタリー映画の現在――冷戦終了後の世界」を主催し、東欧、ロシア、ドイツなどの研究者と意見交換をおこなった。清塚邦彦は、芸術作品を贋作の可能性の有無に応じてautographicな作品とallographicな作品とに分類するネルソン・グッドマンの古典的な議論について批判的検討を行ない、芸術ジャンルごとの作品の存在様態の相違について基礎的な整理を行った。中村唯史は、山形大学人文学部高橋和・山崎彰両教授と『映像の中の冷戦後世界:ロシア・ドイツ・東欧研究とフィルム・アーカイブ』(山形大学出版会、2013年)を共編し、「事実と記録のあいだ:ロシア/ソ連ドキュメンタリー映画をめぐる言説と実践について」と題する論考を書いた。ドキュメンタリー映画の現実再現性をめぐる1920年代ソ連における論争や実践を考察した。また論考「マイトレーヤとレーニンのアジア:無国籍者レーリヒの世界図」を発表し、その中でレーリヒが描いた四枚の絵画の分析を行った。その他、日本マンガの分析として、こうの史代の表現技法の考察を進めた。 平成26年3月8日には、東北大学情報科学研究科の森田直子氏を講師として招き、日本文学研究の森岡卓司氏、表象文化論研究の大久保清朗氏他の参加も得て、マンガ的視覚表象の起源をめぐっての研究会を開催した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、特に現代のメディア的状況の展開の中において、写真、マンガ、ドキュメンタリー映画といった視覚表象の領域における、新たな「身体的リアリティー」の可能性をさぐることである。表象作用の担い手となる作品は、固定的な物として存在するわけではなく、多分に流動的で、受け止める側の関心に応じて変動するような存在である。こうした流動性をはらんだ作品概念が、電子的な複製技術が進展する中でさらにどのような様相を呈することになるのか。また、そのことが作品の表象内容のとらえ方にどのように影響するか。そして、そのような時代においてなお、<身体>的なるものは、いかなる形式を、あるいは形象をまというるのか。これらの課題について、分析哲学による理論的研究、ドキュメンタリー映画を中心とする映像研究、さらにマンガやアニメーションの研究のそれぞれの領域において、理論的かつ分析的研究を実施することがその主眼である。年度計画に提示されていた山形国際ドキュメンタリー映画祭における国内外の研究者、映画作家との研究交流および情報交換も順調に成果を挙げ、講演会、シンポジウム等も60名から100名の参加者を得て、活発な討議と情報交換、さらには冊子体による研究成果の公表もおこなわれ、研究はおおむね順調に推移していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進計画については、三年度計画の最終年度である平成26年度においては、第二年度までの研究成果の相互的な確認と討議を中心に進める。清塚邦彦は視覚表象作品における身体的なるものをめぐる理論的検討のまとめ、阿部宏慈は、ドキュメンタリ-映画における身体表象の問題をまとめ、論考を執筆する。中村唯史は近現代日本のマンガ、文学作品等における身体表象の分析をおこなう。6月には、他大学の研究者による招待講演と討議による第一回研究会を開催する。8月から9月にかけては、「身体論」の思想史的な再検討を、相互の研究成果の比較検討からおこなう。具体的には、清塚による分析哲学的理論構築の努力との付き合わせにおいて検証するとともに、最も現代的な事象である、マンガにおける身体表象の研究へと連続をはかる。 最終的な研究成果は、個別にはそれぞれの関連学会での口頭や論文での発表によっておこない、それとともに可能であれば平成26年度中に、冊子体もしくは年報等の媒体において、全体の成果にかかわる報告をおこなう。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
購入予定であったDVDソフトなどの入荷予定が最終的に年度を超えて処理できなかったため若干の物品経費の残が生じた。 今後、6月頃までに、未購入の資料の再検討をおこない、平成26年度分としての請求した助成金による成果報告の冊子体での刊行をめざし、残額を前期中に使用する。
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