2012 Fiscal Year Research-status Report
地方都市の復興事業におけるジャズ音楽の活用-日米地域文化の比較研究
Project/Area Number |
24520147
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
モラスキー マイク 一橋大学, 大学院社会学研究科, 教授 (80585406)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 芸術・文化政策 |
Research Abstract |
本研究の主目的は、地方都市の復興事業における芸術――殊にジャズ音楽――の活用を、多視点から考察することである。 初年度(平成24年度)は日米両国での一次の現地調査を中心に研究を進めてきた。国内では、まず被災地に重点を置き、次の町で、主にジャズ関連の事業及び復興イベントの関係者へのインタビューを実行した――福島市、宮城県の気仙沼市および南三陸市、岩手県の釜石市、大槌町、花巻市、盛岡市、そして宮古市。また、関西でも現地調査を行い、京都、大阪、そして神戸の各地独自の文化や伝統を踏まえた芸術・教育活動を主宰する個人商店、企業、それに公共施設の代表者の話を伺った。最後に、愛媛県今治市でも同様のインタビューを行い、開催した頃、全国から注目を受けていた「今治ジャズタウン」のイベントが、なぜ近年に衰退してきたかについて参考になる情報を得た。 米国調査では、ミシシッピー川に面した中小都市に焦点を絞りながら、各地の経済復興策におけるジャズやブルースなど、地元の音楽を起用しようとする諸活動について調査を行った。調査先はルイジアナ州のニューオーリンズ市、テネシー州のメンフィス市、ミシシッピー州のクラークスデール市、ミズーリ州のセントルイス市、そしてミネソタ州のミネアポリス市と隣接するセントポール市であった。 各国の復興事業に関する類似点と相違点のみならず、各国内でも予想以上の活動および試行がなされていることがよく分かったが、今後の研究では、特定の町で有効とされる活動が、どこまで「移植可能」かどうか、より詳細に検討しなければならない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
米国内の現地調査で明らかになったのは、当初、予想以上に音楽を活用する復興事業の試みが多岐にわたるということである。また、ジャズやブルースなどがいわば「地元文化」として捉えられがちなので、「異文化」の伝統として位置づけられる日本とは状況が根源的に違うことは言うまでもない。しかし、そのような相違点にもかかわらず、日本の地方都市の復興事業において、米国内の中小都市の事例で参考になる試みは少なくないように思われた。たとえば、今回の調査地のうち、とりわけニューオーリンズとセントルイスでは、音楽のコンサートやイベントに留まらず、来演するミュージシャンに地元の学校(主に貧困街の中学や高校)で教育活動にも参加する制度がある。ニューヨークなどから来演する有名なミュージシャンでさえも、地元校での音楽授業やジャズバンドの生徒を相手に、ワークショップを行うことが挙げられる。これによって、通常のイベントのように〈一回性〉から〈持続性〉のある効果に転じさせようという狙いが見受けられる。日本では、最も類似する試みはおそらく金沢市のジャズイベントではないかと思われるが、当地の調査は次年度で行う予定である。 アメリカとは対照的に、日本の地方都市における復興策としてのジャズ関連のイベントは、年に一回行われる「ジャズ・ストリート」や野外コンサートなど中心のようである。そして、これらのイベントを考える場合、地元のジャズ喫茶に焦点を当てる必要がある。そもそも、ジャズ喫茶という音楽聴取空間自体が日本独自のものだが、地方都市ではジャズが音楽プロモーターの代行役を務めることになるため、本研究の国内調査では、ジャズ喫茶関係者へのインタビューに重点が置かれているわけである。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の場合、各地での現地調査が不可欠であり、研究の二年目に当たる平成25年度の研究計画随行において、国内の現地調査が中心となる予定である。東北の被災地および関西地方、そして愛媛県今治市での追加現地調査に加え、本年度は未調査だった越後地方(新潟市と金沢市が中心)、そして九州の最大のジャズイベントを主催する、佐世保の小規模のジャズ喫茶の関係者へのインタビューも行う予定である。 平成24年度のアメリカでの一次調査を八月に実行したため、セントルイスでは貴重なインタビューを行うことができたものの、夏休み中だったため、主催されたイベントや、地元学校での教育活動を見学することができなった。また、ニューオーリンズの調査の最中で、強力なハリケーンが市内を直撃する恐れがあったため、突然宿泊先のホテルに閉館の知らせを受け、二時間以内にやむを得ず退官する必要に迫られ、次の調査先だったミネアポリスに移転する破目になった。そのため、可能だったら平成25年度にはセントルイスとニューオーリンズでの二次調査を行いたいと考えているが、あくまでも国内調査を優先にすべきだと判断しているので、国内調査の日程および予算との兼ね合いを図ってから米国での二次調査を実行すべきかどうか決定する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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