2015 Fiscal Year Annual Research Report
地方都市の復興事業におけるジャズ音楽の活用-日米地域文化の比較研究
Project/Area Number |
24520147
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
モラスキー マイク 早稲田大学, 国際教養学術院, 教授 (80585406)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ジャズ音楽 / 地方文化 / 復興策と音楽 |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年度は本研究の最終年度だったため、国内外での補完的な現地調査の実施に加え、研究の総まとめに着手した。具体的には、(1)これまでに実施してきたインタビューを整理・分析し、(2)その結果を理論的な枠組みに位置付け、(3)同年度内における研究発表および論文の執筆を重点的に行なった。また、現地調査の総合的な結果を考察する上で、次の問題に注目した。 (1)日米におけるジャズの文化的位置づけの相違――同じ中小規模の都市を事例に比較考察しても、日米におけるジャズ音楽の文化的位置づけには大きな相違点がある。例えば、日本においてジャズに対する認識はあくまでも「外来音楽」であるのに対し、アメリカにおいては「自文化」――つまり「我が国」(ニューオーリンズなどの場合は「我が町」)が生み出した文化――として称揚され、「ローカルプライド」と結び付けられる傾向がある。この意識の違いは、両国の復興事業におけるジャズ音楽の活用とその影響を論じる際に、重要な手掛かりとなった。 (2)文化による復興事業の効果をどう評価すべきか――この問題に関しては、明確な結論は出ていない。たとえば、現在、日本の中小都市でジャズを復興策として活用する際に最も普及している方法は、年に一回行われる「ジャズストリート」やジャズ祭である。こうしたイベントは、開催期間中の動員客数や、商店街の売り上げとして回収される一時的な利益を把握することはできるのだが、具体的な数値には反映されず、目に見える経済効果として現れない側面も有している。そのため、長期的な効果の有無をどのように考慮すべきかが悩ましい。この点について論じるには、「復興とは一体何か」という根源的な問いを避けて通れないが、決して容易に答えられる問題ではない。したがって、本研究では決定的な答え(結論)を性急に出すことはせず、復興の多面性に焦点を当てつつ議論を展開するよう心掛けた。
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Research Products
(2 results)