2015 Fiscal Year Research-status Report
ゴードン・マッタ=クラークの作品と1970年代の自然観
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24520149
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
平野 千枝子 山梨大学, 総合研究部, 准教授 (20402018)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | マッタ=クラーク / ポスト・ミニマリズム / アースワークス |
Outline of Annual Research Achievements |
27年度夏季の調査において、「ゴードン・マッタ=クラーク: エネルギーと抽象」展(ツヴィルナー・ギャラリー、ニューヨーク、9月9日-10月24日)出品の素描作品を実見し、また、遺族所蔵の写真アーカイヴの調査を行うとともに遺族の証言を聴き取った。これにより、研究主題に関する新資料を得ることができた。それだけでなく、カタログ等で出版されているイメージの背後にある大量の写真の存在に触れたことで、現代美術の研究方法自体への考察を促されたことも重要であった。 また1970年代の自然観と芸術に関して、アメリカ美術史のマイケル・リージャ教授(ペンシルベニア大学美術史学科研究科長)の助言を得たほか、ジェイムズ・ニスベット『1960・70年代の芸術におけるエコロジー、環境、エネルギー・システム』(James Nisbet, Ecologies, Environments, and Energy Systems in Art of the 1960s and 1970s, The MIT Press, 2014) のような最新の研究に着目しながら、ポスト・ミニマリズムにおいて素材に作用する非人称のエネルギーの意味を考察した。 本研究の成果の一部を、シンポジウム「ランドアートの話」(恵比寿映像祭・東京都写真美術館主催)において公表した。また年度末に研究フォーラム「ゴードン・マッタ=クラーク:建築と写真」を企画運営し、これまでの調査について報告するとともに、建築と写真の専門家を招聘して意見を交換した。マッタ=クラークの行為を、ひとつの建築を越えて都市に反響していく過程として捉える観点の重要性を示唆された。フォーラムには本学教員・学生、学芸員、美術作家等の参加を得て、今後の議論の複数の可能性を見いだすことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度にマッタ=クラークがコーネル大学でアシスタントとして参加した「アースアート」展についてコーネル大学ほかで調査を行うとともに、ロバート・スミッソンの自然観を考察し、その影響を検討し論文にまとめた。本年度はこれを踏まえて、樹木をモティーフとした素描を検討し、マッタ=クラーク自身の自然観を考察しようとした。ひき続き作品を調査するとともに、ゲッティ研究所所蔵の未公開の初期インタビュウから新たなを視点を得た。これを論文としてまとめようとしているところであるが、上記「ゴードン・マッタ=クラーク: エネルギーと抽象」展のカタログとして、70年代の美術を長年研究しているロンドン大学(UCL)ブライオニー・ファー教授のテキストを含む書籍が近刊予定(2016年5月)であり、これを踏まえての議論が必要になると考え、保留している。 一方、遺族所蔵の未公開資料に接したこと、研究フォーラムにおいて建築論と写真論の観点から助言を得たこと、展覧会を回顧展として美術館・遺族と共同で構想中であることから、本研究課題にとどまらないマッタ=クラーク研究の可能性が開けてきた。本研究の主題そのものを捉え直しながら、進めていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は当初、27年度を最終年度としていた。しかし最終年度に研究成果の公開として予定した小展示は、将来の回顧展へと発展しつつある。研究成果をどのように展覧会構成に組み込むことができるか、美術館および遺族(エステイト)と協議・作業中である。27年度末には、当初予定していた小展示による成果発表に代えて研究フォーラムを開催した。研究フォーラムの報告書作成のため、28年度への補助事業期間の延長を申請した。報告書を作成する過程で課題自体についての考察を深めたい。また、本研究課題に関する論文を夏季に執筆し年内に公開したい。
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Causes of Carryover |
本研究課題は27年度を最終年度と予定していたが、最終年度に研究成果の公開として予定した小展示は回顧展へと発展し、将来の開催を計画している。そのため、小展示とそれに伴う印刷物の作成という当初の計画に代えて、27年度末に研究フォーラムを実施した。研究フォーラムの報告書作成のため、補助事業期間の延長を申請した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
27年度末に開催した研究フォーラムの報告書作成のため、主に印刷・デザイン料、写真使用料に使用し、可能であれば音声聞き取り(短期雇用)、原稿料、翻訳料にも使用する。
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Research Products
(3 results)