2013 Fiscal Year Research-status Report
近現代の東アジアにおける語り物音楽の演奏様式の変容に関する分析研究
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24520154
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Research Institution | Kyoto University of Education |
Principal Investigator |
垣内 幸夫 京都教育大学, 教育学部, 教授 (50117420)
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Keywords | 芸術諸学 / 東アジア / 語り物音楽 / 義太夫節 / パンソリ / 評弾 |
Research Abstract |
平成25年8月17日に、上海市内で評弾演奏家の江文蘭氏(1930~)に対してインタビューを行った。その際『老唱片博覧 評弾篇(1920-1940年代珍貴録音)』(中国唱片上海公司出版、2011年)の音源を一緒に聴いてもらい、歴史的な諸演奏や各演奏家の特徴についてお話しを伺った。 平成25年8月18日には、同じく上海市内で評弾演奏家であり弾詞の音楽理論家・楊徳麟氏(1928~)に対してインタビューを行った。江文蘭氏と同じく『老唱片博覧 評弾篇(1920-1940年代珍貴録音)』の音源を一緒に聴いてもらい、歴史的な諸演奏や各演奏家の特徴について説明して頂いた。 平成25年9月5日に、全州市にある全羅北道立国楽院において西便制の伝承者である名唱丁貞烈(1878~1938)のパディを継承するパンソリ唱者・崔承姫氏(1937~)と、東超制の継承者・李一珠氏(1936~)に対してインタビューを行った。さらに平成25年9月6日には、ソウル市のご自宅においてパンソリの人間国宝・申英姫氏(1942~)に対してインタビューを行い、古い時代のパンソリと現在のパンソリの違いについてお話しを伺った。 平成25年12月18日に、上海市内において評弾演奏家の陳希安氏(1929~)に対してインタビューを行った。この時も『老唱片博覧 評弾篇(1920-1940年代珍貴録音)』の音源を一緒に聴いてもらい、歴史的な諸演奏や各演奏家の特徴についてお話ししてもらった。 平成26年2月28日に京都府木津川市のご自宅で、文楽研究家の高木浩志氏に対してインタビューを行った。その際、ガイスバークの来日出張録音に収められた日本最古の義太夫節の音源を一緒に聴きながら、義太夫節の歴史的な諸演奏や各演奏家の特徴をご説明頂くと共に、現在の義太夫節の演奏との共通点・相違点に関する高木氏の考えを述べてもらった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、近現代の東アジアにおける語り物音楽の演奏様式の変容を分析し、その音楽的特徴を比較することによって、義太夫節・パンソリ・評弾の伝承の実態について明らかにすることを目的として行うものである。 平成25年度の調査・研究では、1920年代~1930年代に生まれた3人の評弾の伝承者に対してインタビューを行い、歴史的音源を聴きながら現在の評弾の演奏様式との違いについてお話しを伺った。長年に亘り演奏家として活躍した3人は、評弾の調(流派)について深い見識を有しており、意義深いインタビューとなった。その成果は、東洋音楽学会西日本支部第257回定例研究会(2014年2月1日(土)於:京都教育大学[D1講義室])において、「近現代における蘇州評弾の変容―江文蘭・楊徳麟氏への聞書を中心に―」と題する研究発表を行って公表した。発表内容は2014年4月20日発行の「東洋音楽学会西日本支部だより 第77号」上に、発表者執筆による要旨と、当日の参加者・明木茂夫氏の報告として掲載された。 パンソリに関しては1930年代~1940年代に生まれた3人のパンソリ唱者に対してインタビューを行った。インタビューの対象者は名唱丁貞烈(1878~1938)のパディを継承するパンソリ唱者・崔承姫氏、東超制の継承者・李一珠氏、人間国宝の申英姫氏であり、古い時代のパンソリと現在のパンソリの違いについてお話しを伺った。 義太夫節については、文楽研究家の高木浩志氏にインタビューを行ない、日本最古の義太夫節の音源を聴きながら、義太夫節の歴史的な諸演奏や各演奏家の特徴を説明頂いた。 すべてのインタビュー対象者がご高齢で、インタビューの内容が近現代の東アジアにおける語り物音楽の演奏様式の変容を明らかにするための貴重な資料となり、平成25年度の調査・研究によって得た成果によって、本研究がおおむね順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は本研究の最終年度にあたる。今後の推進方策は以下の通りである。 ①平成25年度に引続き、韓国のパンソリに対する補足調査及び資料収集を行う。 ②平成25年度に引続き、中国上海において評弾に関する補足調査及び資料収集を行う。特に平成25年度にインタビューを行った3人が推薦する趙開生氏に対するインタビューを実施する(*平成26年度の研究として、「平成25年度実施状況報告書」提出前の平成26年5月4日に、上海市内で趙開生氏に対するインタビューを終えたところである)。 ③平成25年度に収集した『中国曲芸音楽集成 上海巻上・下』に掲載されている評弾各流派の代表曲の数字譜を五線譜化する。 ④平成25年度に引続き、パンソリ・評弾に関する歴史的音源資料・映像資料並びに文献資料の補足収集を行う。 ⑤義太夫三味線奏者で音楽学者の田中悠美子氏と共に、歴史的音源資料・映像資料に記録された演奏を分析し、近現代における変容に関する検討を行う。
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Research Products
(5 results)