2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24520162
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
針貝 綾 長崎大学, 教育学部, 准教授 (70342425)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 工房教育 / ドイツ近代 / バウハウス前史 / 応用自由美術教育実験アトリエ / ヘルマン・オプリスト / デプシツ・シューレ |
Research Abstract |
平成24年度は,バウハウス創設前夜のドイツで設立された教育工房や工房教育を行う美術学校の中でも、特に応用自由美術教育実験アトリエに焦点をあて,資料収集と翻訳,その沿革とカリキュラムについて整理を行った。 同アトリエは,ミュンヘン手工芸連合工房の創設に関わったヘルマン・オプリストがヴィルヘルム・フォン・デプシツとともに1902年ミュンヘンに設立した私立の美術学校である。同アトリエではオプリストの教育理念に従い,基礎教育として人体のデッサンやモデリング,自然の観察によって捉えた対象の形態や動きに実用性を加味して美術工芸の図案制作が行われた。専門教育では制作した図案を各種工房において様々な素材で制作する技術の修得が行われた。工房には金属工房,陶・鋳造工房,スタッコ工房,建築造形工房,グラフィック工房,家具工房,写真工房等があり,生徒はそれらの工房を自由に行き来できた。オプリストは1904年には難聴の悪化により引退せざるをえなくなったが,彼の理念を受け継いだデプシツが学内に商業施設としての工房や展示室を開設し,学外のいくつかの工房と契約することで同アトリエでは活発に工房教育が展開された。 基礎教育の内容や素材別の工房に分かれて専門教育を受ける所など,同アトリエとバウハウスのカリキュラムの類似点は多い。この点が1906年にワイマールに設立され,ヴァン・ド・ヴェルドが校長を務めた大公立美術工芸学校とともに,同アトリエがバウハウスの先駆的な組織と捉えられる所以である。実際,バウハウスの校長の人選を行ったヴァン・ド・ヴェルドはオプリストと,バウハウスの初代校長であるグロピウスはデプシツと交流があり,彼らが同アトリエの教育に強い関心を寄せていたことが判っている。そうした交流を通して,同アトリエの教育理念とカリキュラムが直接間接にバウハウスに影響を与えた可能性も考えられている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画ではザーレック自由応用美術学校とシュテーグリッツ工房附属応用美術専門学校についても調査を行う予定であったが、ヘルガ・シュモル・gen. アイゼンヴェルスらの先行研究によりバウハウス創設前夜における応用自由美術教育実験アトリエの重要性が明らかになり、本年度は同アトリエの調査研究に的を絞った。 平成24年度は夏季休業中に資料調査予定であったが、博士論文の審査に備えて資料調査を春季休業中に変更を行ったため、先行研究の把握が予定よりも少し遅くなった。しかし、同アトリエの概要の把握やオプリストの教育理念についての文章の翻訳は概ね順調に進めることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成25年度前期は、平成24年度3月の資料調査の際に収集したオプリストの著作の翻訳や、応用自由美術教育実験アトリエに関する先行研究の整理を行う。9月にはベルリン、ドレスデン、シュトゥットガルト、ミュンヘンにおいて国立ベルリン王立美術工芸博物館教育施設と国立ベルリン統一自由・応用美術学校、ドイツ手工芸工房附属工芸学校・教育工房、シュトゥットガルト王立教育実験工房とシュトゥットガルト国立工芸学校についての資料収集を行い、ミュンヘン手工芸連合工房の主力図案家たちがバウハウス創設以前にドイツ各地の美術学校において試みた工房教育について明らかにしていきたい。 また、後期においては大学美術教育学会や美術史学会西支部研究発表会において応用自由美術教育実験アトリエについて研究発表を予定している。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の物品費は、応用自由美術教育実験アトリエ、国立ベルリン王立美術工芸博物館教育施設と国立ベルリン統一自由・応用美術学校、ドイツ手工芸工房附属工芸学校・教育工房、シュトゥットガルト王立教育実験工房とシュトゥットガルト国立工芸学校に関する文献の複写、二次資料の収集に使用する。また、旅費については当該資料の国内外の調査の際に使用する。
|
Research Products
(1 results)