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2013 Fiscal Year Research-status Report

フーゴー・ヴォルフの音楽批評文研究

Research Project

Project/Area Number 24520164
Research InstitutionKagoshima University

Principal Investigator

梅林 郁子  鹿児島大学, 教育学部, 准教授 (10406324)

Keywordsフーゴー・ヴォルフ / 音楽批評 / ドイツ・リート
Research Abstract

本研究は、フーゴー・ヴォルフが1884年から1887年にかけて執筆した音楽批評文より、音楽に対する彼の評価基準を明らかにするものである。
平成24年度は1884年と1885年、平成25年度は1886年と1887年の批評文の、既出版資料と自筆稿(ウィーン市庁舎図書館所蔵)を比較した。その上で、音楽に関する評価が含まれる記述を、項目(人物や作品等)別に考察した。平成26年度よりまとめに入るが、本概要では、リヒャルト・ヴァーグナー作曲《タンホイザー》と《ローエングリン》の批評文を、1884年から1887年まで横断的に考察した概略を一例として挙げ、総まとめに先立ってその方向性を示したい。
《タンホイザー》と《ローエングリン》は、15歳のヴォルフをヴァグネリアンとした作品である。また、同時期にヴォルフはヴァーグナーに自作の評価を得て、彼から強い影響を受けた。ヴォルフは《タンホイザー》を1884年と1885年に8篇、《ローエングリン》を1884年から1887年まで10篇の批評文で扱った。
まず、2つの批評文の相違点に目を向けると、《ローエングリン》では、言葉や音楽に関する記述が多く、言葉では明確な発音と場面に応じた表現が要求され、音楽では登場人物に合った表現をするよう、具体的な提案もなされていた。しかし、《タンホイザー》では、むしろ歌手の持ち声と演劇的表現の関連性についてが、多く述べられ、また、音楽的表現が演劇的表現と相まって、ひとつの舞台を作り上げるという考えも強く示された。次に、2つの批評文の共通点としては、作品自体の批評が全くされていないことが挙げられる。これは、創作者が演奏者よりも優位に立つというヴォルフの考え方に基づくものだが、この二作品については、その理由を、作品に対する無条件な賞賛に帰すことも可能であろう。
今後、他の批評文でも同様の考察を進め、研究全体をまとめていく。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

平成25年度は、ヴォルフの音楽批評文のうち、1886年分(全29篇)と1887年分(全16篇)を対象として、(1)ウィーン市庁舎図書館での資料調査、及び出版資料との比較、(2)批評文の内容に関する分類と考察、の2つの計画を実施した。
まず(1)では、2013年9月1日から13日までウィーンに滞在し、図書館にて該当資料の収集と調査を行った。これは、批評文の自筆稿とその掲載紙『ウィーン・サロン新聞』の収集・調査であり、自筆稿においては全資料について、順調に作業を終えた。一方、『ウィーン・サロン新聞』はマイクロ・フィルムでの閲覧になるが、昨年の時点で、図書館に、本研究に対応できるフィルム・リーダーが一台しかなく、また予約ができない旨を報告した。本年も設備の状況は変わらず、このリーダーが唯一の性能の良い機種で、利用希望者も大変多く、日々順番待ちをせねばならないことから、短期滞在で全ての調査を終えることは不可能と判断し、断念した。そのため、本研究ではマイクロ・フィルムの調査は研究に含めず、自筆稿と出版資料のみを研究対象とする。尚、この変更は、資料調査と資料の比較が内容研究をするための準備段階であるため、自筆稿と出版資料のみで考察の基礎資料を形作ることは、内容研究を全体として見たときには大きな障害にならないと判断している。
(2)については今年度も、対象の二年間の批評文について、ヴォルフの音楽に対する評価を反映する記述を人物・作品等の別に抽出・分類する作業を続けた。この点については特に問題なく考察を進めることもできており、「研究実績の概要」で例を挙げたように、出現回数の多い一部の項目においては項目同士の比較検討や、ひとつの項目における年を経る毎の変化などについての検討にも入ることができた。そのため、平成26年度に音楽批評文における評価の基準や変遷をまとめる際の下地作りも順調に進んでいると考えている。

Strategy for Future Research Activity

平成24・25年度までに、ヴォルフの記した音楽批評文において、ヴォルフの音楽的評価を反映すると考えられる記述を、項目別に抽出し、分類してきた。既に一部着手しているが、今年度の研究は次の三点を進めてまとめとしたい。
(1)項目(作曲者・作品等)別の出現頻度の比較―これまでの研究で、ヴォルフが取り上げた項目は、単に鑑賞の機会の多かったコンサートに拠るものが上位に来ているとは限らないことが判明した。つまり、何を(誰を)批評に取り上げたかは、ヴォルフの関心の高さ(必ずしも肯定的な評価だけではないが)を示す指標と考えられるのである。そこで各項目の出現頻度を整理し、ヴォルフがどのような項目を多く批評しているのか、つまり強い関心を抱いていていたのかを考察する。
(2)項目(作曲者・作品等)別の内容考察―(1)で整理した資料を基に、ヴォルフが各項目について、具体的にどのような考えを持っていたのかを整理する。各項目は、4年間の批評文全体を通じて扱っているものもあれば、年を経る毎に増減している場合もあることから、その取扱い方の変化についても考察することで、ヴォルフの各項目に対する考え方や関心の度合いの変遷を明らかにする。
(3)ヴォルフの音楽に対する評価基準をまとめる―(1)・(2)の作業・考察を基に、1884年から1887年に至るまでの、ヴォルフの音楽に対する評価基準をまとめる。特に1887年で『ウィーン・サロン新聞』の批評活動を終えた後、1888年は歌の年を迎え、100曲に近いリートを一年で作曲していることから、この批評活動がヴォルフの音楽に対する考え方の発展に大きく寄与したのではないかと現時点では考えている。
以上の三点を進め、最終的にはヴォルフの音楽批評文における音楽の評価について、ヴォルフの作品研究や文書研究が進められる上で参照できる、全体的なモデルを作成したい。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

平成25年度は、直接経費予算額991,620円のうち、物品費290,990円(設備備品費200,000円、消耗品費90,990円)と旅費700,630円(国内150,630円、海外550,000円)の支出を予定していた。しかし、直接経費使用額は857,791円(内訳は様式F-6-1参照)で、133,829円が平成26年度使用額となった。
物品費については、当初予定していたよりも文具等消耗品の使用が少なかったことなどにより、次年度使用額が生じた。また旅費については、学会発表の日程が調整できず参加できなかったこと、海外旅費が当初予定していたよりも少額で済ませられたことが、次年度使用額が生じた理由である。
平成26年度は、直接経費予算額433,829円(平成26年度交付額300,000円+平成25年度未使用額133,829円)を、物品費78,829円、旅費110,000円、人件費・謝金80,000円、その他165,000円で使用予定である。
物品費は、研究に関連する書籍などの備品、また、インク・トナー類、記憶媒体類、資料整理用の文具等に使用予定である。旅費は国内図書館における資料収集(国立音楽大学附属図書館のRILM系データベース等閲覧を予定している)と学会発表(全九州大学音楽学会を予定)に係る交通費、及び宿泊費である。人件費・謝金は論文、及び報告書作成にあたって外国語で文書を作成する際の校閲などに係る謝金を予定している。その他では、印刷が遅れたため昨年使用できなかった、昨年度発行予定の学術誌に係る論文別刷料の他、今年度が研究の最終年となることから報告書印刷等に係る費用を計上した。

  • Research Products

    (1 results)

All 2014

All Journal Article (1 results)

  • [Journal Article] フーゴー・ヴォルフの音楽批評文における《ローエングリン》2014

    • Author(s)
      梅林 郁子
    • Journal Title

      鹿児島大学教育学部研究紀要 人文・社会科学編

      Volume: 65 Pages: 87-100

URL: 

Published: 2015-05-28  

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