2012 Fiscal Year Research-status Report
明治期・大正期・昭和期に国内外で活動した彫師に関する実証的研究
Project/Area Number |
24520165
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Tsuru University |
Principal Investigator |
山本 芳美 都留文科大学, 文学部, 准教授 (50363883)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 国際情報交換 台湾 / 国際情報交換 フランス |
Research Abstract |
当年度においては、主に次の3点の作業をおこなった。 1、幕末から現代にかけて発行された新聞(朝日・読売・毎日のデータベース・横浜毎日新聞・都新聞・日本初期新聞全集・カストリ新聞・幕末明治新聞全集など)・雑誌などにあたり、イレズミに関する事件やできごと・話題に関する記事を収集した。その結果をもとにさらに関連図書・資料などを探し、幕末から開港直後の横浜の状況について明らかにすることができた。また、「不良」文化とイレズミの関わりについても、ある程度の見通しを得ることができた。この作業で得た資料は、所属学科の創設20周年を記念して出版された都留文科大学比較文化学科編2013『せめぎあう記憶』(柏書房)の第5章「「台湾原住民族」と「日本人」のイレズミとその記憶 イレズミへの賞賛と規制をめぐって」の執筆に組みこむことができた。 2、秋田県立美術館に収蔵されている藤田嗣治旧蔵のイレズミ資料について、美術館の許可を得て閲覧と撮影をし、また藤田嗣治自身とその作品がいかにイレズミと関連していたかについて学芸員の方から資料をもとに教授を受けた。 3、フランス・パリにあるケ・ブランリ美術館で2014年5月より2015年7月まで催される「Tatoueurs,Tatoues」展準備に協力した。これは現代美術の視点から世界各地のイレズミ文化をとりあげる特別展であり、台湾各地の博物館に所蔵されているイレズミ関連資料の所在確認をおこなった。また、図録の執筆もおこなった。その作業に平行して、映画監督である北村皆雄氏が30年前に撮影した台湾タイヤル族とパイワン族、ルカイ族のイレズミに関する記録映像(約50分)の字幕づくりをおこない、ほぼ完成をみた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前記で挙げた1に関しては、新聞・雑誌にあたっても、当初の目的であった彫師の行動がなかなかうかびあがってこないきらいがあるが、それでもイレズミを愛好した人々(人力車夫・かごかき・飛脚・馬丁など)の行動・思考様式や時代背景を資料から理解することができた。残りの研究時間の約5割を1の作業にあてれば、相応の成果は得られると考えている。 2は計画通り遂行することができた。 3の台湾調査は、当初研究計画になかったことであったが、フランスの美術館からの要請があったことと、その企画展に携わることで自己の研究に広がりを持たせられることから協力をおこなった。所蔵品調査においては、予定通り遂行することができた。映像の字幕づくり(映像から撮影場所を特定し、当地を訪ねて各原住民族語の話者に映像を観せ、会話を中国語に訳してもらい、そのうえで日本語字幕をつくる)に関しては、数年前から協力していた。なかな進まず懸案となっていた作業であったが、今回の滞在でついに完了させることができた。台湾の諸民族のイレズミに関する人類学的記録を残すことができたことは、一つの研究成果であると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は次の方向で研究を推進したいと考えている。 1、国内において、幕末から現代にかけて発行された新聞・雑誌・絵画資料などにさらにあたり、イレズミに関する事件やできごと・話題に関する記事を収集した。その結果をもとにさらに関連図書・資料などを探す作業をより進展させている。思ったより先行研究で言及されていない資料が国内にあることがわかったため、まず着実に資料の渉猟をすすめて研究の土台を固めたい。 2、したがって、2年目以降、海外の図書館・博物館での渡航した彫師と日本のイレズミに関する調査を予定していたが、海外調査の滞在先は当初予定していたものと変更となる。この研究計画変更の背景には、本年度滞在を予定していたオランダ・アムステルダムにあるタトゥー博物館が昨年末に閉館したという事情があり、別の滞在先を探す必要があるためである。 3、2013年度に予定している滞在先としては、フランス・パリのケ・ブランリ美術館がある。当美術館からは、これまでの研究成果を活かして来年度から14か月行われる「現代美術と世界のイレズミ」特別展の図録の一部を執筆してほしいとの依頼があり、その打ち合わせや展示予定作品を内覧する必要があるためである。また、その際には当初の研究計画通り、イギリス・ロンドンにある大英博物館付属図書館に滞在し、日本の彫師とイレズミについての資料を探したいと考えている。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前記1の目的に15万円(地方の県立図書館などへの旅費、書籍購入費、コピー費、資料整理のための人件費を含め) 3の目的に85万円(海外渡航費、謝礼、書籍購入費、日当) ほかに、研究成果発表の目的(抜き刷り印刷費・学会参加・発表の経費・日当)に関し、10万円 計110万円を予定している。
|
Research Products
(2 results)