2015 Fiscal Year Research-status Report
明治期・大正期・昭和期に国内外で活動した彫師に関する実証的研究
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24520165
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Research Institution | Tsuru University |
Principal Investigator |
山本 芳美 都留文科大学, 文学部, 教授 (50363883)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 海事文化 / 彫師 / 大衆文化 / 香港 / フィリピン / 東南アジア / イレズミ / 刺青 |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年は3月に香港・シンガポールに滞在し、9月に香港・台湾に出張して文献調査と資料収集をおこなった。今年度は、昨年度の研究実績を踏まえ、さらに香港について重点的に調査することを目標にすえ、香港大学と香港中文大学の両図書館において所蔵する香港関連資料を閲覧した。また、この結果、20世紀初頭に香港に滞在した複数の日本人彫師のうち最も著名であったと考えられる野間傳三郎について、出身地、生前の仕事の変遷、香港日本人社会の中での位置づけ、仕事場の住所ならびに写真、没年や墓、子孫などについて、明らかにすることができた。 さらに、台湾の中央研究院や国家図書館において、利用可能なデータベースを使用し、資料を検索した。日本国内においても東京経済大学図書館や早稲田大学図書館などで資料調査をおこない、フィリピンのマニラにて20世紀初頭に仕事場を有していた彫師の人名、仕事場の様子などを記した同時代資料や近年に発表された研究論文を入手することができた。 文献研究のほかにも、横須賀に在住する80代の彫師に対してインタビューを試み、戦前戦後における横須賀の状況、主たる客としていた米軍兵の様子、朝鮮戦争やベトナム戦争との関連について話を聞くことができた。 これまで収集したデータについては、日本人彫師たちが拠点として活動した欧米、東南アジアの国ごとに年表形式で整理し、文献情報とともに保存している。最終年度にあたる2016年に実施した調査成果を加味して、この研究計画の最終報告書としてまとめる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2015年は3月と9月に2回香港に滞在し、香港大学図書館などで資料を収集することができた。これにより、20世紀初頭に香港や近隣諸国に拠点を置いて活動した日本人彫師たちの軌跡をある程度明らかにすることができた。また、5月に80代の横須賀在住の彫師Hさんにインタビューすることにより、ベトナム戦争時の米軍兵の移動に伴い、上海、香港、横須賀、香港、サンフランシスコと仕事場を転々と移動した華人系彫師がいたことがわかった。この華人系彫師のピンキー・ヤンは横須賀にタトゥースタジオをはじめて運営し、ベトナム戦争に伴い、香港に米軍兵が盛んに訪れるようになると香港に引き上げていった人物である。さらに、ピンキーはアメリカ西海岸に渡っており、現在は息子たちがこのタトゥースタジオを引き継いでいるという。当時、香港にはそうした米軍兵目当ての彫師が多数営業していたそうだが、ピンキー・ヤンが開拓した横須賀の店はHさんが引き継ぐほか、軍艦が入るたびに横須賀に出稼ぎに来た日本人彫師がいるなど、基地と戦争、彫師とその客の関係が明らかとなった。このような成果を踏まえ、今後どのような地域を研究対象にすればよいのかの見通しをつけることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、5月に利用可能なデータベースが非常に多い台湾・中央研究院に滞在し、資料収集を進める予定である。また、9月にカナダのトロントにあるロイヤルオンタリオ博物館において、イレズミ展が催されることもあり、当地での文献情報収集を行う予定である。この出張の際には、ニューヨークでも日本人彫師である、Yoshisuke Horitoyoが20世紀初頭に滞在していたことも念頭におき、ニューヨーク市立図書館にて、日本で利用しにくいデータベースなどを中心に用いて関連新聞記事などを探したいと考えている。 今年度は最終年度のため、9月の出張後には、報告書をまとめる予定である。暫定的だが、報告書をまとめることによって、19世紀末から20世紀初頭に国内外にて活動した日本人彫師の全容が見通せるようにしたいと考えている。
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Causes of Carryover |
本年度は、比較的近隣のアジア地域(香港、シンガポール、台湾)にて資料調査をおこなった関係上、比較的旅費を使用しなかったため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度は最終年度にあたるため、二つの計画を実施して本研究を終了したいと考えている。一つは、9月に再度アメリカ・カナダに渡航し、2016年4月よりトロントのロイヤルオンタリオ博物館で催されている「タトゥー展」を見学するとともに、現地の公共図書館や大学図書館等で日本にはないデータベースを使用して資料調査をしたいと考えている。 もう一つの計画としては、最終報告書を刊行したいと考えている。そのため、各種資料の翻訳代、編集費と印刷費が必要と考える。 この二つの計画を遂行することにより、予算は使い切る予定である。
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Remarks |
(1)は、アカデミックジャーナリズムを名乗る「SYNODOS」より依頼されて、一般向けに研究を還元する目的から、本研究成果の概要を記した文章である。
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Research Products
(2 results)