2014 Fiscal Year Research-status Report
近代日本の<ダンス-モダンダンス>概念の形成に関する歴史研究
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24520183
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
杉山 千鶴 早稲田大学, スポーツ科学学術院, 教授 (40216346)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中野 正昭 明治大学, 文学部, その他 (40409727)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 小森敏 / 日本人の舞踊 / 浅草オペラ / 舞踊・新舞踊 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、①明治期~昭和初期のモダンダンス創始者の理念と実践、②多くの舞踊演目の上演されたオペラ、の2つをテーマとした。 ①では引き続き小森敏に注目した。特に1922年にフランスに拠点を移してから1936年の帰国までについては、これまでに国内の文献・資料より活動の概要については明らかになっていた。しかしこのたびフランス滞在中に小森が作成したと思われるスクラップブックが発見された。これにより公演活動の詳細として、日程、会場(国・地域と劇場スペースの規模)、発表作品が明らかになり、さらに作品では日本やアジアを題材としたものが多く、振付では基本的には日本舞踊の型を用い、バレエの身体操作方法を活用し、日本人の特性と小森の考えたものを盛り込み、洋楽を使用し、「日本人ならではの舞踊」を追求したことを分析できた。近代の欧米において長く舞踊活動を展開していた小森敏は、日本人舞踊家の中では貴重な存在であるが、その具体的な詳細が明らかとなり、モダンダンス創始者の特異な例として位置付けることが可能となった。 ②浅草オペラでは「ダンス」「舞踊」「新舞踊」等の演目が数多く上演されており、モダンダンス創始者による試作品も多く上演された。当時の新聞の遊覧案内欄より、それら舞踊作品を可能な限り抽出しリスト化した他、絵葉書等の資料よりその技法やダンサーの習熟度を考察した。また舞踊の上演を成立させた浅草オペラの状況と、舞踊の隣接領域である音楽、興行形態を切り離して考えることは不可能であるため、2015年3月1日に公開シンポジウム「浅草オペラの音楽・舞踊・演劇」を開催し(於・早稲田大学小野記念講堂)、ダンスがいかなる概念として大衆に浸透していったのか、そして舞踊作品のみならず喜歌劇における舞踊場面も含めて検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
モダンダンス創始者であり、海外での長期間にわたる活動者の事例として小森敏に絞り、従来の研究に平成26年度の研究を加えることによって、渡米前・欧米滞在中・帰国後を通してその舞踊理念と実践、公演活動について明らかにすることが出来た。 また浅草オペラにおける舞踊作品をリスト化することによって全体像が明らかになり、「ダンス」の語の用例については、今後、このリストを批評文等と照合し考察を行うだけの段階にある。 また現物資料の収集とデータ化も随時進めている。 以上より、本研究は順調に進展しているものと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は最終年度であり、総括の時期に相当する。今後は、現物資料の収集とデータ化を並行して行いつつ、これまでの研究成果を通時的にまとめ、改めて雑誌・新聞等のマスメディア言説と突き合わせ、<ダンス―モダンダンス>という概念が、舞踊の教育・実践の場でいかに形成されたのかとの結論を導き出す。そして本研究成果を、データベースの公開、出版等により広く公開する。
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Causes of Carryover |
諸般の事情等により、夏季休業中に予定していた関西での資料収集・調査が不可能となったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度は総括の位置づけであるが、現物資料の収集を継続して行う。現物資料は主に古書店から入手するが、品物、代金共に事前に予測不可能であるため、この費用に加えることとする。これにより現物資料のデータベースをより充実させることが可能となるものと期待できる。
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