2013 Fiscal Year Research-status Report
現代日本のポピュラー音楽の歴史的・文化的再評価と海外での受容に関する学際的研究
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24520190
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Research Institution | Sugiyama Jogakuen University |
Principal Investigator |
長澤 唯史 椙山女学園大学, 国際コミュニケーション学部, 教授 (50228003)
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Keywords | ポピュラー音楽 / ポストモダニズム / アヴァンポップ / 国際情報交換:米国 / 国際情報交換:中国 / 洋楽受容 / ボーカロイド |
Research Abstract |
平成25年度については、研究会、シンポジウム等を企画し、国内の研究者や音楽活動に携わる実作者を交え、日本のポピュラー音楽の過去・現在・未来について意見交換などを行う場を設けた。11月にはまず、愛知教育大学教授の久野陽一氏、愛知県立大学非常勤でボーカリストの宮崎尚一氏、大阪大学教授でミュージシャンの菊池誠氏を招聘し、日本の洋楽受容の歴史に関するシンポジウムを開催した。また同じく11月に、慶應義塾大学准教授の新島進氏、京都大学特任准教授の八代嘉美氏をパネリストとして招聘し、ボーカロイドという新たな音楽ツールを巡る哲学的・美学的な議論を行った。さらに日本ポピュラー音楽学会での様々な発表や議論、新たな資料の入手などを通じて、現在の日本の音楽状況についての理解を深めた。 また初年度に引き続き、日本のポピュラー音楽研究に関する資料収集とその再検討を行った。具体的成果としては、日本のポピュラーミュージックに関する研究・批評等の文献収集において、英語圏における研究書および一般向けの情報(雑誌等)で新たな資料が発見できた。また7月には米・仏・中の研究者へのインタビューを行い、海外での日本音楽の認知度等についての情報を得た。 さらに、ポピュラー音楽の視聴や販売を巡る現状についても現地調査を行った。本年度はまず夏に、継続的に調査を行っているサンディエゴにて調査を行い、音楽の流通・拡散についてはますますネット依存が高まっている状況を確認した。3月には初めて中国での日本文化の受容について現地調査を行い、日本のポピュラーカルチャーへの関心が極めて高いこと、また中国においても書店やミュージックショップなどが著しく減少しネットでの普及が種になりつつあることなどを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)日本のポピュラー音楽の歴史とその特徴を、欧米のポピュラー音楽と比較検討しながら、その文化的特異性を明らかにする。 (2)現在の日本のポピュラー音楽の海外展開の現状を精査し、その問題点を検証する。 (3)近年の日本のポップカルチャーの海外展開、とくにインターネットを通じた普及の現状を調査し、日本音楽の普及に必要な戦略や手法を提言する。 上記が本研究の目的であるが、(1)については研究資料の検討とインタビュー等による情報収集、またシンポジウムやパネルにおける意見交換によって、日本の音楽需要・消費の特徴や歴史がより明確に把握できている。また(2)についても今回初めて中国での現地調査を行い、英語圏との共通点・相違点が明確になった。(3)については本年度新たに入手した資料を通じて現状での情報や商品の流通の状況がより明確になったこと、欧米とアジアの対比が可能となったことで、これまでのクール・ジャパン戦略で見落とされていた点が見えてきた。26年度はイギリスでのイベント視察を行う予定であり、そこでさらに調査を進め、提言をまとめたい。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の課題とした各方面の専門家・実作家との交流や意見交換が一定の成果を見たので、本年度も引き続きパネルやシンポジウムを積極的に企画し、議論の深化・精緻化を目指す。昨年度のパネリストの菊池誠氏、宮崎尚一氏、久野陽一氏、八代嘉美氏らに加え、音楽愛好家の方たちにも積極的に情報提供を求めていく。 夏にロンドンで開催予定のイベントに参加し、日本文化の受容についての情報収集をさらに進めるとともに、現地で入手可能な日本のコンテンツなどを確認する。 そして3か年の研究のまとめとして、日本のポピュラー音楽受容に関する研究発表や論文執筆を行い、成果として発表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2014年8月14日より18日まで、イギリスのロンドン市において第72回世界SF大会が開催されることになり、そこに参加することで本研究に必要な情報収集や意見交換が行えることが明らかとなった。世界中から参加者が集まるため、とくに本研究の重要なポイントである海外での受容に関する情報がこの場で数多く収集できることが予測される。 そのため、平成26年度にイギリス出張を組み込むために、その予算を確保する必要が生じ、次年度に繰り越すこととした。 8月14日より8月18日まで開催される第72回世界SF大会に参加するために、以下の費用の一部に充てることとする。①大会参加費(£125)②航空運賃(約25万円)③宿泊費(約15万円)。
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