2012 Fiscal Year Research-status Report
耳鳥齋の戯画と近代漫画の比較研究-アニメーションの源流としての江戸時代の戯画-
Project/Area Number |
24520196
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
中谷 伸生 関西大学, 文学部, 教授 (90247891)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 耳鳥齋 / マンガ / アニメーション / 戯画 / 江戸時代 / 岡本一平 |
Research Abstract |
耳鳥齋の戯画が、現代のマンガ・アニメーションの源流であるかどうかを調査・研究し、如何なる理由と根拠によってそれが証明できるかをさまざまな資料を発掘・調査・検討して明らかにすることを目指した。また、耳鳥齋の戯画作品を全国各地に出かけて調査し、それらをデータ化して、基礎資料としてのアーカイブズの作成を試みた。 耳鳥齋の戯画は、江戸時代の鳥羽絵と時を同じくして登場し、当時の社会、とりわけ大坂において一世を風靡し、大変な人気を博したといわれる。 現代日本におけるマンガ・アニメーションの特質とその源については、これまで十分な研究がなされてこなかったが、今回の調査・研究において、かなりの文献資料と戯画作品が発掘・整理され、これまで不明であった江戸時代の戯画と現代のマンガ・アニメーションとのつながりが、ある程度、明らかになったものと考えられる。たとえば、耳鳥齋の版本『絵本水や空』と岡本一平の関係も、発見された資料によって、かなり緊密な関係があることが実証された。これは大きな実績であると考えられる。 耳鳥齋や与謝蕪村らの大坂の戯画作品が、現代のマンガ・アニメーションの源流であると断定することは、未だできないが、そのことは、次年度の調査によって進展が望まれる。今年度の調査・研究は、その結果を導く基礎調査・研究となったことが大きな成果であろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
耳鳥齋の研究については、新作品の発掘が大きな意味をもつ。今回の調査で、新たな作品を発掘することができ、それは戯画作品研究にとって決定的な意味をもつ。比較的遺存する数が少ない耳鳥齋については、新発見の重要性は、それだけで大きな研究の進展となる。また、岡本一平などの近代の漫画家の足跡を追求し、江戸時代の戯画との関係をある程度、確証できたことは大きな成果である。 また、今年度は、耳鳥齋の研究論文と資料紹介を、各種の紀要や研究誌に計3本発表し、学会発表などで研究発表したことも有効な成果であったと考えられる。研究発表の準備の中で、さまざまな文献資料を収集し、それらを体系的にまとめることができたことも重要な成果の一部である。 耳鳥齋の戯画作品と文献調査の作業は、所蔵者が個人である場合が多いため、最初はかなりの困難を伴うと推測していたが、予想以上の調査が進み、目標を大きく上回る成果を上げることができたと考えられる。 次年度は、江戸時代の戯画と近代のマンガ・アニメーションとのつながりを証明するための調査・研究に本格的に取り組む予定であるが、そのための基盤が今年度確立したことは大きい。 江戸時代の戯画と近代のマンガ・アニメーションとの深い関係を明らかにすることは、日本の文化の特質の解明と将来の文化発展の礎となるため、この研究が重要であることはいうまでもない。今年度の成果は、そのことに尽きるであろう。
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Strategy for Future Research Activity |
江戸時代の戯画と現代のマンガ・アニメーションの関係をめぐる調査・研究は、何よりも作品調査の進展が中心となる。何よりも、これまで見出されていない新作品の発掘が重要であり、実作品や文献資料の収集・整理が基本となる。そのために、引き続き全国各地の美術館・博物館・個人所蔵者を訪問し、作品や文献資料の調査を根気強く続ける必要がある。 ただし、研究2年目となるため、資料整理に加えて、研究成果の公表を目指して、研究全体のコンセプトを確立する作業に入らねばならない。各種の学会や研究会での発表も視野に入れて、研究を進めるつもりである。中でも、江戸時代と近代・現代の戯画やマンガ・アニメーションとの関わりについては、あらたな作業が求められるため、今年度は図書館を中心に文献調査の深化を目指すべきであろう。 江戸時代の耳鳥齋の戯画が、現代のマンガ・アニメーションの源泉であるかどうかは、資料発掘と並んで、実証的な裏づけを確実なものにしていく必要があろう。今後の方策としては、その点に焦点を絞っていくことが重要であり、そのことを具体的かつ有効に進めるつもりである。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
戯画作品の調査・研究を進めるためには、調査のための交通費、写真撮影費、パソコンやデジタル・カメラなどの必要機材の購入、作品と図書資料の収集費、所蔵家に対する謝金などが主なものとなる。調査出張に際しては、助手の役割を果たす学生アルバイトが必要である。大きな費用としては、海外(中国)における研究発表のための学会参加費が重要である。
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