2013 Fiscal Year Research-status Report
耳鳥齋の戯画と近代漫画の比較研究-アニメーションの源流としての江戸時代の戯画-
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24520196
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
中谷 伸生 関西大学, 文学部, 教授 (90247891)
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Keywords | 耳鳥齋 / 江戸時代の戯画 / マンガ・アニメーション / 菅楯彦 / 大坂画壇 / 蘭亭曲水図(戯画) / 蕪村から耳鳥齋へ / 近代日本画 |
Research Abstract |
江戸時代の戯画作者の耳鳥齋については、新作品の発掘と文献資料の収集が基本的な調査研究となる。今回の調査研究では、新たな発掘によって一定の成果を上げつつある。比較的遺存する作品が少ない耳鳥齋については、新発見の戯画が5点から10点に達すれば、かなりの成果というべきであろう。また、岡本一平や大阪の菅楯彦の戯画(あるいはマンガ・アニメーションというべきか)の発掘も、今回の時代を比較した研究、すなわち、江戸時代の戯画と近代・現代のマンガ・アニメーションとの比較研究にとって重要な意味をもつ。それらの成果を学会をはじめとする種々の口頭発表で公開し、成果の意義を世に問うた。研究発表の準備作業中に、多くの作品資料および文献資料の整理を行った過程で、耳鳥齋と江戸時代の戯画作品や近代マンガの体系的な理解が深まったことは、大きな成果であった。 学術論文の執筆と公開については、近代のマンガ・アニメーションと深い関連のある大阪の日本画家である菅楯彦について、「菅楯彦の魅力とその評価-マンガ・アニメーションと東アジアの文化的伝統-」(『菅楯彦展-浪速の粋・雅人のこころ-』鳥取県立博物館、2014年2月)を同展覧会カタログに掲載し、全国に発信した。また耳鳥齋の戯画と密接な関わりを示す大坂出身で晩年は京都で活動した与謝蕪村らの位置づけを行い、学術論文「捻じれ歪んだ日本の文人画研究」(『美術フォーラム21』第28号2013年11月)に掲載して成果を広めた。加えて、「蘭亭曲水図-狩野山雪から浦上春琴へ-」(『東アジア文化研究紀要』第3号(関西大学東アジア文化研究科2014年3月)と題する学術論文において、独自の蘭亭図を描いた耳鳥齋の作品を紹介し、その戯画作品の広がりに言及した。 学会等の口頭発表では、中国の広州・社会科学院において、「耳鳥齋を含む大坂画壇」を発表して、海外への発信を行った。以上、調査研究とその発信で成果を上げた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
耳鳥齋の戯画作品の収集において、新資料10数点の発掘があり、大きな成果である。これによって、これまで実現していない耳鳥齋の網羅的なカタログの出版が可能となった。すでに2015年3月出版で原稿執筆に入っており、来春には画期的な耳鳥齋カタログが刊行される予定である。 耳鳥齋の戯画と近代のマンガ・アニメーションとのつながりを、戯画とマンガの表象における類似のみならず、東アジアの伝統とも密接につながるという予想外の成果を得たことは重要である。これまで研究者たちによって考えられていない独創的な着想であることから、学会に寄与すること確実である。 加えて、学会などのアカデミックな場所のみならず、新聞紙上で「江戸時代のクールジャパン」と題した新聞記事を掲載し、一般社会にも刺激を与えたことは大きな意味をもつ。
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Strategy for Future Research Activity |
2014年度は、耳鳥齋や近代のマンガ・アニメーションにつながる調査研究を継続して、資料収集に一層の力を入れるとともに、最終年度として、過去3年間の蓄積をまとめ、図書『耳鳥齋アーカイヴス-大坂画壇の戯画-』を刊行して、学会はいうまでもなく、一般社会のニーズ、すなわちクールジャパンと呼ばれる日本のマンガ・アニメーションの骨格の意味とその源流を明らかにしたい。 さらに、そられの成果をもって、日本全国はもとより、中国や台湾などの海外学会での発表による国際的発信を視野に入れている。それらの一部として、10月には台湾キールンでの学会発表を予定している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
京都の妙心寺他の美術作品所蔵者において、2013年度に予定していた調査などが、修理改築などにより、2014年度に持ち越されたため、次年度使用額が生じた。 約5箇所にあたる京都の美術作品所蔵者宅を訪問し、調査研究を行う。
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