2013 Fiscal Year Research-status Report
中世文学における伝承性とその視覚的展開に関する研究
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24520202
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
菊地 仁 山形大学, 人文学部, 教授 (50125762)
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Keywords | 伝承 / 絵巻 |
Research Abstract |
2013年6月1、2日。日本大学文理学部で行われた平成二十五年度・中世文学会に出席。今回は特に、お伽草子系の異類物の絵画化について発表が二人からあり(『隠れ里』および『百鬼夜行絵巻』)、本研究にも大いに参考となった。6月29、30日。南山大学で行われた平成二十五年度・説話文学会に出席。ここでも、『麻疹太平記』と『是害房絵』という説話系文学作品の絵画化に関わる発表が続いて、あらたな知見を得ることができた。これらの研究発表はいずれも、民俗に基づく中世文学の視覚的想像力を問題とする内容で、本研究とも密接に関係するものである。 それらを踏まえ、8月20日に「見返る西行-伝承・絵画から和歌へ-」(『西行学』)を、11月15日に「東北地方の“髪長姫”と“玉取姫”」(『國學院雑誌』)を、それぞれ上梓した。前者は、前年度のシンポジウム報告(前年度の研究成果には含めず)に基づくものだが、口頭発表の段階では時間の関係からふれえなかった絵画的イメージと和歌表現の問題を中心に大幅に改稿した。後者は、以前より考えていたテーマで、6月8日に日本文芸研究会で講演したことを機に、人形浄瑠璃との関わりなどを再検討し直して、東北地方における口頭伝承の問題を多角的に論じた。 この間、断続的に『京狩野の研究』『岩佐又兵衛全集』『宗達伊勢物語図色紙』『近世和歌画賛の研究』『絵と語りから物語を読む』『源氏物語の享受』など、主に絵画関係の資料および研究書を中心とした物品を購入した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題は、中世の日本文学における伝承的な視覚イメージを考察するもので、初年度より在地の民間芸能をも視野に入れた広い関心のもとで研究を進めてきた。 今年度もその方向から、浄瑠璃などをとおした中世文学の地方伝説化を問題としてみた。と同時に、より文学作品に近い素材として、歌人の西行法師が後世の伝承的図像のなかで、彼固有の身体や仕種の特徴を際立たせてゆく現象についても考察した。 これらの作業が、次年度にむけ、より民俗的な図像の対象範囲を拡大してゆく足掛かりになったと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
次の一年が本課題の最終年度になるので、絵巻や注釈書のみならず、これまでやや手薄だった衣装や工芸品あるいは祭礼のなかで、中世文学に基づく図像の新たな発掘を期したい。そのことによって、中世文学の視覚的な享受を再評価し、基層文化的な側面からさらなる多彩な分析の可能性を提示できうるものと思う。
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