2014 Fiscal Year Annual Research Report
雑誌『白樺』における文学の営為についての総体的な研究
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24520212
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
清水 康次 大阪大学, 文学研究科, 教授 (70137173)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 『白樺』 / 文学と美術 / 武者小路実篤 / 西洋美術の受容 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、文学・美術の両分野に跨る雑誌『白樺』(1910-1923年)を取り上げ、文学を孤立した営みとして研究するではなく、当時の社会や諸文化・諸芸術との関わりにおいて捉えようとするものである。 平成26年度は、25年度から研究していた、『白樺』の代表的同人である武者小路実篤の活動及び思想について、論文にまとめ、発表した。『白樺』創刊号の巻頭に掲げられた「「それから」に就て」という評論に中心を置き、この評論を創刊号の冒頭に掲げることにどのような意味があったのか、また作品の理解として正当なものであったのかを問うことから始め、漱石作品に対する周到な理解の反面に、大きな考え方の食い違いがあったことを指摘した。また、それが実篤の当時の思想と結びつくものであり、また『白樺』の方向性と繋がっていくことを明らかにした。 さらに、前年度に引き続き、『白樺』における西洋美術紹介の調査を続けた。これについては、当初は創刊期について先ず論文にまとめたいと考えていたが、美術紹介の充実期の全体を網羅的に検証しなければまとまりのないものになってしまうことがわかった。そのために、調査に予想以上の時間を要し、見通しは立ったものの論文にまとめるには至らなかった。 この研究期間全体を通じて、『白樺』同人たちの位置づけと彼等を取り巻く時代状況を明らかにすることができた。また、同人の代表者といえる武者小路実篤の創刊期の考え方や活動を明らかにすることができた。さらに、当時の文学と美術とのかかわりについては、『白樺』以前の文学と美術とのかかわりを詳細に検証し、『白樺』のそれと連続するものではなく、『白樺』のそれが独自のものであることを明らかにした。今後、『白樺』と美術とのかかわりについては、できるだけ早く論文にまとめることとし、同人相互の関係についても、もう一つ掘り下げた研究を後続させていきたいと考えている。
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