2015 Fiscal Year Research-status Report
近世琉球和文学の考究および沖縄版「伝統的な言語文化」としての教材化
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24520220
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
萩野 敦子 琉球大学, 教育学部, 教授 (90343376)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 伝統的な言語文化 / 近世琉球の文学 / 雨夜物語 / 恋路之文 / 高等学校国語教科書 |
Outline of Annual Research Achievements |
1,近世琉球期に書かれた擬古文「雨夜物語」について、諸本を調査し、そのうち県立図書館三冊本「大島筆記」所収本、山内家蔵本「大島筆記」所収本、三井旧蔵本「大島筆記」所収本について翻刻、対校作業を行った。 2,近世琉球期に書かれた擬古文「恋路之文」について、那覇市歴史博物館で許可を得て琉球資料所収「恋路文」影印を複写し、翻刻を行った。本作品については貴重な先行研究として1963年3月に琉球新報に連載された多和田真淳による紹介があることがわかったので、那覇市立図書館にて収集した。 3,研究の最終年度(延長申請したため平成28年度が最終年度となる)に予定している、近世琉球期の擬古文の高校生向け教材化作業の準備として、現在の高等学校における古典教材の研究も同時に進めた。その中から、高等学校の国語教員やそれを目指す大学生等に提供しうる資料として、幾つかの「定番教材」の採録状況を表にして整理する作業を行った。具体的には、国語総合古典編の入門教材である「説話」教材のリスト、国語総合および古典A・Bの定番教材である『枕草子』『徒然草』、古典Bの定番教材である『源氏物語』の細かな採録傾向をまとめた。 4,上記3の作業をおこなう中から、『源氏物語』の教材および教科書からうかがえる教授の傾向については特に論考としてまとめておく必要性を感じたため、論文「高等学校国語教科書が導く『源氏物語』の世界」として、おおやけにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成27年度は、年度当初予定していなかった業務が学内外で入った。学内では、入学試験の全学点検委員となったため、本学で行われる推薦・前期・後期すべての入試問題について複数回にわたり目を通したり作成者と面談するなど時間を割く必要が生じた。また学部内では、平成29年度からの改組が決まったことに応じて、学部改組ワーキング委員を務めた。学外では、東京教育大学の教員養成評価開発研究のメンバーとなったため、多くの書類に目を通したほか複数回の出張があった。これらのことから、研究に使える時間が予定よりも大幅に限られることになった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終的な目的は、近世琉球期の擬古文作品(平敷屋朝敏による4つの物語作品、「雨夜物語」「恋路之文」)について、高校生を対象とした古文教材にすることである。これらの作品については、すでに基礎的な資料を収集し終えているので、口語訳と簡単な注釈を添えたテキストを作成することで、それを果たす。
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Causes of Carryover |
公務・校務が多忙をきわめ(その内容については前述)、研究計画どおりに研究を進めるに至らず、助成金を十分に使用する機会がなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
「伝統的な言語文化」の教授に関する最新の見解を知るための研究文献の購入および本研究の成果を活かして作成する高校生向けテキストを印刷するためのプリンターおよび消耗品の購入に充てる予定である。
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