2013 Fiscal Year Research-status Report
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24520226
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
村田 右富実 大阪府立大学, 人間社会学部, 教授 (30244619)
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Keywords | 上代文学 / 万葉集 / 統計学 / 多変量解析 / 和歌 / 日本書紀 / 混合効果モデル / サポート・ベクター・マシン |
Research Abstract |
今年度は、昨年度に引き続き、大阪府立大学工学研究科に所属する統計学の専門家(川野秀一氏)とともに活発に研究を行った。万葉短歌の母音の遷移を、舌の高さと奥行きを数値化し、多変量解析の手法の一つである混合効果モデルを導入し解析を行った。そして、その結果を、美夫君志会全国大会(於:中京大学)においては、万葉短歌から見た研究成果を発表し、2013年度統計関連学会連合大会(於:大阪大学)においては、その解析手法から見た研究成果を発表した。特に前者は、その後同会に投稿し、雑誌への掲載が決まっている。混合効果モデルを用いた声調の解析結果の詳細は同誌に譲るが、東歌と防人歌とが万葉短歌の一般的様相から著しく乖離しており、その様相を可視化することに成功した。また、それぞれの乖離の仕方は決して同じではなく、東歌と防人歌の具体的な様相を考える第一歩ともなった。また、山上憶良の短歌については、たしかに一般的な短歌から遠い位置にあるが、有意といえるほどの差は出ておらず、憶良歌のありようをどのように把握するかについてはこれからの課題である 一方、万葉集の文字について、1字ごとに正訓字、音仮名、借訓、熟字訓に分類し、これをもとに新たに解析を行いつつある。サポート・ベクター・マシンを使用し、どの歌が万葉集全体の一般的書式から外れているかを検証している。平成26年度には公表する予定である。 また、サブ・テキストの校正は、実際の解析が速いペースで進んでいるため、その校正作業が膨大であることもあり、徐々に進めている。これから先、日本書紀の区分論を客観的に解析することを目指しており、現在日本書紀の校正作業を鋭意進めているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究代表者の勤務先である大阪府立大学の学内公募「異分野研究シーズ発掘・連携促進・融合領域創成事業」に採択され、工学部の統計学の専門家(川野秀一氏)と協働でき、データの状況に最適の統計手法を容易に選択できるようになり、さらに、今まで文学分野に応用されたことのない解析手法(混合効果モデル、サポート・ベクター・マシン、超幾何検定ほか)を利用できるようになり、これまでの研究とは全く違った地平の研究が可能になったため。 すでに、万葉集研究の学会においても、統計学の学会においても発表し、多くの成果をあげることができている。 これらの点に鑑みて、今後もさらなる研究の進展が期待できるため、今年度は「研究計画最終年度前年度の応募」を考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在は、万葉集を中心に解析を行っているが、日本書紀の区分論や古事記の巻毎の様相の具体的な解明にも研究を進められそうである。さらに、おうふう版の『万葉集』を底本に、上代特殊仮名遣いを区別した万葉集のテキストファイルも作成したため、より細かな解析も可能となった。 今年度は、この上代特殊仮名遣いをも考慮した解析結果について学会発表を考えている。しかし、その一方、データの堅牢性をしっかりと保つことも重要であると考えている。そのため、塙書房版の『万葉集』についても上代特殊仮名遣いを区別したテキストファイルを作成することを視野に収めている。複数テキストを利用した学会発表を目指すとなると、今年度の学会発表は諦めざるを得ず、悩ましいところである。ただし、現在、『日本書紀』の校正は着々と進んでいるため、『日本書紀」の区分論についての解析を優先させることも考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究代表者の勤務先である大阪府立大学の学内公募「異分野研究シーズ発掘・連携促進・融合領域創成事業」に採択されたため、研究補助のための人件費を中心に予算執行を押さえられたため、これを「異分野研究シーズ発掘・連携促進・融合領域創成事業」が終了する今年度にまわし、さらなる研究の発展を期したため。 「理由」欄にも記したように「異分野研究シーズ発掘・連携促進・融合領域創成事業」の助成が無くなったため、その分で支出してきた統計解析用のソース作成の費用等を補う予定である。
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