2013 Fiscal Year Research-status Report
権門都市宇治の歴史的展開を視点とした院政期文学再評価のための基礎的研究
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24520227
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Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
西本 寮子 県立広島大学, 人間文化学部, 教授 (70198521)
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Keywords | 中世王朝物語 / 院政期文学 / 宇治 / 摂関家 |
Research Abstract |
2年目である25年度は,24年度に引き続き、摂関家をはじめとする中世権門の成立と展開についてのこれまでの研究成果に基づく知見を得ると同時に文献資料に基づく裏付けを行うため、資料収集および情報収集に努めた。とりわけ、歴史研究の進展状況を知るため、既発表論文など文献に頼るのみならず、計画書の記載にしたがって、歴史学研究者の助言を得ながら院政期研究の第一線の研究者たちが集う研究会や実地踏査に参加した。物語研究の現状把握については、学会のほか研究会に参加、中世王朝物語を研究する若手研究者たちの研究成果を知ることに努めた。 院政期研究においては、12世紀から13世紀にかけての摂関家の動向を衰退と捉えるか、権力構造を変化させつついまだ力を保っているのかが議論されているが、最新の研究状況や成果を知ることができた。得られた知見に基づき、権力維持に必要な経済的基盤の変化を確認するため、摂関家領の拡大を『荘園史料』等を利用して実態の把握を行った。また、権門としての摂関家にとって、宇治や木幡などの地、寺社、津などが持つ意味を探るため、地形・地勢を把握し、宇治が軍事拠点となり得る可能性について検討できる資料や研究成果の収集に努めた。実地踏査においては、木幡浄妙寺跡地をはじめとする藤原氏の墓所群がある地域を実際に歩き、宇治市史等の記載との差異や史料の記載との突き合わせを行った。これらにより立体的なイメージを持つことができた。一方、文学研究とくに物語文学研究においては、いまだ旧来の時代区分に基づく考え方によって研究が進められる傾向が一部にある。院政期の文学が作られた背景としての時代状況や中世的世界の特徴を含む近接諸領域の最新の研究成果の把握の必要性を痛感したところである。 得られた知見の一部は「王朝文化の継承者としての平家の人々」(『宮島学』所収、渓水社、H26.3刊、pp.27-49)に盛り込んだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
学内業務の増大に加えて家族の介護などの個人的事情が重なり、秋以降、資料整理作業がなかなか進まない状況が続いているのが研究遅延の最も大きな原因である。平日の研究活動が制限されているため、web上で閲覧できない資史料や情報の収集、整理は遅れている。ただし、最新の研究成果や歴史学をはじめとする近接諸学の研究成果については、情報が得られ次第、購入あるいは収集することに努めたことから、一定の成果は得られたと考えている。限られた時間の中で、最大の成果が得られるよう、計画の再整理が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度、25年度の計画は資料および情報収集と整理が中心であり、歴史学研究については一定の成果を上げたが、頼通文化圏の文学、文化状況を探るための資料の収集が遅れていることから、これについて継続的に資料・情報の収集、整理を行う。とくに、祐子内親王家サロンを中心とする文化活動についての情報整理、および頼通文化圏の人々との交流についての考察を早急に進める。 本年度は研究の最終年度であることから、中世王朝物語研究の立場から院政期の文学状況を見据えて成果をまとめることを最優先にする。そして、得られた知見と成果については、今後の研究につなげることを意識して、物語研究および院政期文学と文化状況の研究の進展に寄与するよう整理するととする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
情報収集作業全体が遅れたことにより、補助者に支払う謝金の支出が予定額より少なくなったため。 情報収集補完のための旅費(京都府総合資料館)に充当するとともに、情報収集についての作業の遅れを取り戻し、最終年度報告に反映させる。
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