2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24520233
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Research Institution | Tamagawa University |
Principal Investigator |
中田 幸司 玉川大学, リベラルアーツ学部, 教授 (30407697)
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Keywords | 日本文学 / 古代文学 / 平安宮廷歌謡 / 催馬楽 |
Research Abstract |
本研究では平安宮廷歌謡『催馬楽』の基礎的研究環境を整えるため、未刊行注釈資料の収集・調査・分析とともに、既存の詞章の分析、表現史上の定位、主題をとらえながら、往時の平安宮廷人以降の当該歌謡に関する注釈・享受史を構築することを目指した。25年度においては、『催馬楽』とは何か、という根本的な理解が従来の地方の風俗歌を中央が取り入れたという理解から、平安宮廷人の創作の痕跡の残る創作歌謡としての一面が徐々に理解され始めた年度であったといえる。それが24年に上梓した『平安宮廷文学と歌謡』(笠間書院)に対する25年5月、日本歌謡学会における第30回志田延義賞受賞につながったものと考える。これに引き続き日本歌謡学会編『古代から近世へ 日本の歌謡を旅する』(平成25年11月、和泉書院)においては『神楽歌』・『催馬楽』ならびに詞章「東屋」・「妹が門」・「無力蝦」をはじめ『土左日記』の歌謡についても分担執筆をし、新見を提示した。また、既刊の藤原茂樹編『催馬楽研究』に翻刻された九州大学蔵紀三冬『佐伊婆良註解』の複写を入手した上で翻刻ならびに解題に疑問のある点を明らかにした上で現地九州大学に赴き、限られた時間の中、調査を実施することができた。一方で、前年度来実施してきた讃岐高松吉田蕃教著、楽章『神楽歌催馬楽辨解』・一条兼良著『梁塵愚案抄」の翻刻作業も終盤となっており、兼良の解釈の影響が今日の『催馬楽』を理解する基盤を作っていることは一見間違いのないことに見えながら、そもそもその発想の源がどこにあるのかを追究する必要性が出てきた。また年度末3月には「『催馬楽』「力なき蝦」攷-歌人の行為とその象徴-」(平成26年3月『玉川大学リベラルアーツ学部研究紀要、第7号)を論文として発表し、これまで理解が滞っていた同歌の分析と考察を行った。いずれも文学史上においても意義あるものといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
複写請求の後、翻刻を試みている作業が予想以上にかかっていること、また、注釈書の筆者の出自などの追究に時間が取られたことがあげられる。しかし、『平安宮廷歌謡と文学』の上梓、受賞によって書評も数本とりあげられたことで、従来の理解から抜け出た成果は予想以上に早く浸透したことは評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度に実施してきたことをふまえ、改めて慶應義塾大学斯道文庫、ならびに東京大学所蔵の注釈類を複写、翻刻していく必要性とともに、その注釈の本意を見定めながら、一方で催馬楽61曲のうち、追究の十分ではない詞章を分析・考察していくとともに、受容・享受についてもより深く考察していく必要性が起きてきたため寸暇を惜しんで研究を推進させたい。具体的には岐阜県高山市・荏名文庫蔵書は重点的に深めていき、この3年間の結果を少しでも形にし世に問いたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
予定以上に校務ならびに週末の出勤が多かったため、関係書誌の調査の実施ができなかったことが大きな理由としてあり、同時に必要性の高い古書の購入がうまくいかなかったことがあげられる。 都内はいうまでもなく、地方において計画をしていた文献収集、調査を滞りなく計画になるたけ沿ったかたちで遂行させたい。また必要性の高い注釈類の中で未刊行、マイクロフィルム化になっていない古書の購入を躊躇なく実施したい。
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Research Products
(3 results)