2013 Fiscal Year Research-status Report
『琉球国由来記』『琉球国旧記』を中心とする琉球王府編纂事業の基礎的研究
Project/Area Number |
24520236
|
Research Institution | Rissho University |
Principal Investigator |
島村 幸一 立正大学, 文学部, 教授 (70449312)
|
Keywords | 琉球王府 / 編纂事業 / 『琉球国由来記』 / 家譜 |
Research Abstract |
本年度は、「『宮古島旧記』(雍正五年本)に記されたアヤグ-「地方旧記」の歌謡世界-」(島村幸一編著書『琉球 交叉する歴史と文化』勉誠出版、2014年1月刊、pp96-118)と「『佐銘川大主由来記』論-第一尚氏を始祖に戴く氏の物語-」(『南島文化』第36号、沖縄国際大学南島文化研究所紀要、2014年3月刊、pp1-18)を発表した。 「『宮古島旧記』(雍正五年本)に記されたアヤグ-「地方旧記」の歌謡世界-」は『琉球国旧記』(1731年)の資料のひとつとなった「地方旧記」であるが、この書における歌謡世界を探ることによって見えてくる宮古島地域の歌(アヤグ)によって伝えられる「歴史伝承」を考察した。宮古島地域はアヤグによって地域の歴史を伝える伝統があったが、これが漢文で記される『琉球国旧記』には反映されることがなかったことも考察した。「『佐銘川大主由来記』論-第一尚氏を始祖に戴く氏の物語-」は昨年度から手掛けていた、第一尚氏を始祖に戴く一族の始祖伝承を記した資料 『佐銘川大主由来記』を解読した論である。第一尚氏の本家筋は、「地方」にあって士族になることはなかったが、その一族が第二尚氏の時代になってどのように自らの一族の物語を作り、記したかを考察した。この論は、家譜を持つ士族とともに、家譜を持たなかった一族がどのように自らの一族の物語を描くのかを知る上で、大いに参考になると思われる。 この外、本年度は宮古島に赴き宮古島市立総合博物館に所蔵されている仲宗根家本『御嶽由来記』『宮古島旧記』(雍正五年本)』『宮古島記事』『宮古島記事仕次』等を写真撮影により収集した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
宮古島旧記』(雍正五年本)は、宮古島の在藩役人の下で編纂された「地方旧記」だと考えられるが、これがどのようなかたちで琉球王府が編纂する『琉球国由来記』や『琉球国旧記』に取り入れられるかが、本課題のテーマにひとつである。そのような意味で、拙論「『宮古島旧記』(雍正五年本)に記されたアヤグ-「地方旧記」の歌謡世界-」は研究課題を進める上で、重要であったと考えられる。 また、「『佐銘川大主由来記』論-第一尚氏を始祖に戴く氏の物語-」で扱った『佐銘川大主由来記』は、その形成に『琉球国由来記』の記事が関係していると考えられる。そのような点で、『琉球国由来記』や『琉球国旧記』の記事が氏族の物語を作るのに、一定の影響を及ぼしていると推測される。すなわち、家譜や家譜を持たない氏の由来伝承は、『琉球国由来記』や『琉球国旧記』を編纂する際の資料になった問題と、これとは逆に『琉球国由来記』や『琉球国旧記』の記事が、家譜や家譜を持たない氏族の伝承に影響した面とがあり、双方向で考えなければならないことが分かった。そのような意味で、本研究課題の捉え方に広い視点が確保されたといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続き、家譜資料の収集と家譜を持たない氏(百姓門中)の由来記を収集して、それが『琉球国由来記』や『琉球国旧記』を編纂する際、それがどのように資料化されていったのかを考察していく予定である。また、同時に上記したように『琉球国由来記』や『琉球国旧記』が家譜記事や氏(百姓門中)の由来記に影響している問題についても、考察する予定である。さらに、「地方旧記」の収集にも引き続き努めていき、これが『琉球国由来記』や『琉球国旧記』にどう取り入れられていったかを考察する予定である。 もうひとつ、『琉球国由来記』の記述にも影響している古琉球末期に琉球の様子を伝える袋中上人(1603年~1605年に琉球に滞在したか)の『琉球神道記』も研究の対象にしていくつもりである。『琉球神道記』は、最初の正史であった『中山世鑑』にも影響しており、王府の編纂書の「琉球認識」を考える上で重要な書であることが分かってきた。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は、昨年度から手掛けている『佐銘川大主由来記』についての研究が中心になり、科研費による資料調査が宮古島を中心とするものに偏った。そのために、当初の計画通りの予算執行ができなかった。 来年度は、短期の海外研修に行く機会に恵まれたので、ハワイ大学東西センターにあるホーレー文庫の資料を活用して、本課題に取り組む予定である。また、八重山や沖縄本島地域に赴き、資料収集をはかる予定である。
|
Research Products
(7 results)