2013 Fiscal Year Research-status Report
国際的基盤形成を視野に入れた日本近代文学における内務省・GHQ検閲の研究
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24520241
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
十重田 裕一 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (40237053)
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Keywords | 日本近代文学 / メディア / 出版 / 検閲 / 岩波茂雄 / 岩波書店 |
Research Abstract |
本研究課題における本年度の成果の第一は、『岩波茂雄 低く暮らし、高く想ふ』(ミネルヴァ書房、2013年9月)を上梓したことである。この書物では、これまで国内外で収集してきた資料を活用しながら、研究課題に掲げた内務省・GHQという異なる二つの検閲を一つの出版社に照明を当てて考察した。それにより、内務省及びGHQの検閲と出版とのかかわりについて、20世紀日本における言論統制の特色の一側面を解明した。『岩波茂雄 低く暮らし、高く想ふ』の中では、内務省との関係については、第二次世界大戦中の日本で起こった津田左右吉事件をはじめ、戦前・戦中の岩波書店と言論統制との関連について論究した。一方、戦後については、占領期におけるGHQ検閲を、岩波書店における最初の総合雑誌『世界』に触れながら言及した。それにより、異なる二つの検閲に対する出版社の対応の一端を明らかにすることができた。 当該研究テーマに関する成果を、一人の出版人及び出版社という枠組みのもとにまとめる一方で、戦前から戦後にかけて活躍した作家に注目しながら、この時期のメディア検閲と日本近代文学とのかかわりを明らかにしようとする研究も同時に推進した。主な対象として取り上げたのは横光利一と川端康成であり、この二人の作家と内務省・GHQ検閲との関連についても、着実に研究を進めることができた。横光利一に関する研究の成果については学術書にまとめ、川端康成については、2014年9月にフランスで開催される国際シンポジウムにおける発表等を通じて、公にしていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の最終年度までに出版予定の研究成果が約一年前倒しで出版でき、また、次年度の研究成果公表の準備が当初の予定よりも早まった。よって、計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2013年度には、当該研究テーマに関する成果を一人の出版人と出版社という枠組みでまとめたが、2014年度は近代日本の作家の枠組みのもとに検討を進めてゆく。具体的には、9月にフランスのパリで開催される国際シンポジウム「川端康成21世紀再読ーモダニズム、ジャポニズム、神話を超えて」において、川端康成と占領期の検閲にかかわる発表を予定している。他に、横光利一と内務省・GHQの検閲に関する論考を含む学術書を刊行する計画である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初2回予定していた海外研究出張が、校務のために1回になってしまったことが、「次年度使用額」の生じた主な理由である。 今年度は、昨年度実施できなかった海外研究出張を計画、加えて研究成果発表にかかわる費用に当てることで、使用計画の調整を行う予定である。
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Research Products
(1 results)