2013 Fiscal Year Research-status Report
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24520248
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
三浦 俊介 立命館大学, 理工学部, 非常勤講師 (70599323)
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Keywords | 貴船神社 / 日本文学 / 日本史 / 宗教学 / 京都学 / お伽草子 / 丑刻参り / 神話 |
Research Abstract |
本研究は、京都賀茂川の上流に鎮座する貴船神社の初めての総合的研究である。近年はパワースポットとして、あるいは縁結びの神社として多くの観光客を集めているが、貴船神社は、上賀茂・下鴨神社や伏見稲荷大社などに比べて研究が遅れている。江戸時代以前に地蔵堂や不動堂などがあったことは忘れられ、さらにその昔、奥宮で狐や蛇を祭っていたことも知られていない。研究代表者は古代からの貴船神社の知られざる歴史を、埋もれた史料や多くの文学作品の中から読み取り、真実の貴船神社の全体像を明らかにすべく多角的な研究を続けている。 研究内容は概ね4部に分けられる。第一部「総説」:①地名「きふね」名義考・②貴船社祭神考・③鞍馬寺との関係、第二部「信仰・歴史」:①神社通史・②摂末社の変遷・③稲荷と飯綱・④神仏習合、第三部「文学」:①和泉式部の和歌と歌徳説話・②『梁塵秘抄』の歌謡・③『貴船社歌合』・④貴船神社の和歌・⑤『沙石集』の敬愛祭・⑥丑刻参りと能『鉄輪』・⑦六字経曼荼羅・⑧お伽草子『貴船の本地』・⑨貴船神社の二系統の神話、第四部「史料紹介」:①貴船神社藏『黄舩社人舌氏秘書』・②國學院大学藏『木船谷者所持記』・③高野山大学蔵『丑日講式』・④『勝尾寺文書』・⑤個人蔵『貴船神社境内絵図』・⑥貴船神社蔵『貴布禰社惣絵図』などである。これらの研究のうち、一②・二②③・三③⑦⑧⑨は先行論文のない新研究であり、四①②⑥は今までに影印・翻刻のない新出史料である。 既に翻刻公刊した史料に『木船谷者所持記』があり、既に執筆した論文にA『貴船の本地』関連の論文6編、B「貴船神社」関連の研究、C「貴船社歌合は上賀茂神社で詠まれた」など計10編がある。そのうちC以外の論文は2014年内に刊行予定の『神話文学の展開』に収録する。その他の論文や史料については『貴船神社の歴史と文学』という報告書を年度内に作成の予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度は國學院大学藏「座田家文書」のマイクロフィルム全889点(雄松堂書店)を購入して解読・分析を進めた。また、国立国会図書館デジタルコレクションの「賀茂社記録」(全97冊)の存在が新たに判明したため、インターネット上で貴船神社に関する情報を集中的に集めた。上賀茂神社所蔵の大部な『賀茂旧記』も入手し、現在解読中である。 昨年は伊勢神宮・出雲大社の式年遷宮の年であり、多くの神社関係の書籍が刊行された。神社・聖地や神道・宗教に関する出版が盛んであることは、貴船神社の研究を進める上でも非常に有利であった。残念ながら、貴船神社に関連する書物は多くはなかったが、しかし、だからこそ代表研究者の研究の新しさと重要性があるわけである。 今年は最終年度である。八、九月のうちに「貴船神社の歴史と文学」の史料を整備し、論文も執筆して研究成果を公表する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の柱は以下の四つである。 (A)貴船神社研究のデータベースと言える「貴船神社史料集」の編纂が最も重要である。①貴船神社所蔵文書として以下の二つがある。a『黄舩社人舌氏秘書』、b『貴布禰社惣絵図』。②上賀茂神社関連文書群として以下のものがある。c上賀茂神社所蔵文書(『賀茂旧記』を含む)、d上賀茂神社社家「座田家旧藏文書」(『木船谷者所持記』を含む)、e国立国会図書館デジタルコレクションの「賀茂社記録」、③江戸時代の地誌類、④「貴船」を詠んだ和歌の集成、⑤その他の機関・個人所蔵のもとして以下のものがある。f高野山大学ほか蔵『丑日講式』・g「丑刻参り」を記す最古の史料『勝尾寺文書』・h個人蔵『貴船神社境内絵図』どが核となる。 (B)史料集や他の神社の史料ほかを用いて「貴船神社略年表」を作表する。 (C)各論の執筆:①和泉式部関連の和歌説話、②貴船神社関連和歌、③『梁塵秘抄』の歌謡、④夜参・丑の刻参りの伝統下に生まれた謡曲「鉄輪」、⑤お伽草子『貴船の本地』の成立、⑥丑日講式、⑦六字経曼荼羅、⑧稲荷信仰や飯綱信仰との関連、など。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
使用額が生じた最も大きな理由としては、上賀茂神社所蔵文書の閲覧・複写が次年度の作業になったことが挙げられる。前年度・当該年度は、上賀茂神社の社家であった座田家旧藏の文書の調査・整理を優先的に行ない、100年間行方不明であった『木船谷者所持記』を発見し、全文の翻刻紹介をした。また、貴船神社に関連した和歌や神祇歌についての研究を深め、文治三年に催された「貴船社歌合」(原資料は散逸しているので、諸書から集成した)という歌合が上賀茂神社摂社の貴布祢社での営みであったことを明らかにした。 次年度は上賀茂神社文書群の整理・分析をしつつ、「貴船神社の文学と歴史」のまとめをすることになる。しかも、次年度の調査・研究は、貴船神社の神話や『貴船の本地』についての論文9編を収める単著『神話文学の展開』(思文閣出版、2014年刊行予定)の校正も行いながらの作業となる。 次年度の助成金は上賀茂神社神社所蔵文書群の調査と、貴船神社研究の総まとめのために使用されることとなる。
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Research Products
(4 results)