2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24520248
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
三浦 俊介 立命館大学, 理工学部, 非常勤講師 (70599323)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 神社 / 貴船神社 / 貴船の本地 / 縁結び / 呪詛 / 和泉式部 / 神祇歌 / 神話 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、京都市左京区の貴船神社に関する初めての総合的研究である。近年はパワースポットや縁結びで有名になり、多くの善男善女が参拝しているが、貴船神社は、同じ京都市内の神社でも上賀茂神社・下鴨神社・伏見稲荷大社・北野天満宮・八坂神社(祇園社)などに比べて調査研究が遅れている。本課題では、貴船神社の知られざる歴史を、多くの文学作品や史料の中から浮き彫りにすべく多角的に研究を進めている。 現在は、研究成果となる報告書『貴船神社の文学と歴史』に掲げる史料の正確な翻刻と各項目=論文の執筆に努めている。全体構成は、この1年間の調査と考察を踏まえて、昨年度の「研究実績の概要」から若干の変更がある。第Ⅰ部「歴史編」は「貴船神社略史」「きふね名義考」「貴船社祭神考」「六字経曼荼羅の呪詛神」「解放と解体の明治維新」など。第Ⅱ部「文学編」は「和泉式部と敬愛祭」「貴船社歌合」「能『鉄輪』と丑刻参り」「中世神話『貴船の本地』の形成」など。第Ⅲ部「摂末社編」は「飯綱社の謎」「日吉社の成立」「山神社から結の社へ」「梶取社は稲荷である」など。第Ⅳ部「史料紹介編」は1『黄舟社人舌氏秘書』、2『木船谷者所持記』、3『丑日講式』、4『勝尾寺文書』、5『日吉社託宣記』、6「貴船神社境内絵図」(貴船神社蔵・天理大学藏・個人蔵など)などである。第Ⅰ部の「解放と解体の明治維新」、第Ⅱ部の「貴船社歌合」、第Ⅲ部の全てが従来研究のないテーマである。第Ⅳ部で翻刻紹介する史料の中でも1『黄舟社人舌氏秘書』は貴船神社秘蔵の内部資料で、初めて活字化が許可された非常に貴重な史料である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
(A)貴船神社・上賀茂神社・伏見稲荷大社・日吉大社など、京滋の神社にまつわる神話や祭祀の研究と、中世神話『貴船の本地』の注釈的研究を中心とする単著『神話文学の展開』の刊行が遅れている。それは、貴船神社研究とは無関係の論考の執筆が進展していないからである。多角的な問題を抱えた論文なので、資料の分析、先行論文の読解、論点整理に時間を費やした。 (B)『貴船神社の文学と歴史』の各項目の調査・執筆に時間がかかっている。神社(本社だけでなく摂末社の変遷を重視した)の歴史、宗教(神道・神仏習合・修験道ほか)、文学(和歌・歌謡・神道集・お伽草子・近世神話)、美術(六字経曼荼羅・三十番神図・洛中洛外図・参詣曼荼羅・境内図など)など、テーマが非常に多岐にわたるため、調査・整理・分析にかなり手間取った。 (C)また前年度、新たに天理大学附属図書館に貴船神社の境内図6図が所蔵されていることが判明したのは非常にありがたいことであったが、一日に3点しか閲覧できないので、この調査にも時間がかかった。
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Strategy for Future Research Activity |
(A)貴船神社に関する論文を含む単著『神話文学の展開』を確実に刊行する。 (B)報告書『貴船神社の文学と歴史』を完成させる。 (C)『貴船神社史料集』を完成させる。
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Causes of Carryover |
次年度は報告書と史料集の完成に向けて最終的な資料収集と各項目の執筆に力を注ぐ。基本的な史料はほぼ収集したと思われるが、本年度中に新たな課題として浮かび上がった「洛中洛外図」や天理大学附属図書館所蔵貴船神社境内絵図などを含めて、報告書完成のために必要な史料を追加補足するために、次年度の助成金が必要である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度当該助成金を使用する主な対象は以下の3点である。(A)上賀茂神社・天理大学附属図書館ほかが所蔵する文字・絵画史料の最終的な収集・整理にかかる費用。(B)報告書執筆のために必要な文献(史料集・単行本・論文など)を購入・閲覧・複写するのに必要な費用。(C)報告書の公開に向けての技術的な検討のために必要な費用。紙媒体で出版するのか、デジタルデータ化してディスクとして配布するのか、ウェブ上で公開するのか、その中のどれが研究を公開するのに最も有効なのか、方法論だけでなく必要経費についても検討する必要がある。
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Research Products
(1 results)